2018年1月4日木曜日

未開封の情報提供書

仕事始めの今日は確か去年は割にヒマで昼寝も出来た・・と「こてる日記」にはあった。それを知っていたのでお気楽気分で仕事に就いたのだが、たまたま救急ピッチ当番だったこともありこれがまた忙しいのなんの、顔面挫創、呼吸困難、意識消失後心肺停止とどんどん重症の患者が運ばれて来るじゃない。呼吸困難の患者は胸部CTでびまん性に粒状影がありすわ結核かと疑うもどうもそれじゃなさそう、しかしあまり見ない所見ゆえに治療に自信がなくサンキュー病院に電話したらなんと受け入れてくれ助かった。

心肺停止患者は当然気管挿管に心臓マッサージ(胸骨圧迫)と頑張り一旦心拍再開したので今ぞとばかり頭部CTを指示した。というのも入所していた施設職員から「この方は大きな脳動脈瘤がある」という情報があり、くも膜下出血が大いに疑われたからだ。で、結果は案の定そう。しかも瘤は3cmを越える巨大なものだった。CT室を出たらまた心停止したため心臓マッサージに強心剤を注射し、この間に家族が来て私は状態を説明し「またすぐに心臓は止まるかも」と救命は期待出来ないことを伝えた。すると、家族は半年前の8月に近くの脳外科クリニックから受け取っていた未開封でかつ病院無指定の情報提供書を差し出した。

中身を要約すると「この人は大きな動脈瘤を持っていて意識を失うような事態になったらSAH(くも膜下出血)を起こした可能性が高い。その場合、本人、家族は積極的な治療は望まれていない。それに急死していた場合は本当にSAHによるものかもしくは誤嚥によるものなどの可能性を否定できずその場合はCTによる検死(死後CT)が必要になるかもしれない」とあった。ほう、まさに今日の事態を想定していたかのようだ。

ならばと、心拍再開後は人工呼吸器で静観していた。また心臓は止まるかもと思いきや、一向に心停止する兆候はなく入院させることになった。頭の出血がなければ心臓は丈夫だったろうに。で、今夜は当直だったのでいつでも対応できると構えていた。結局、明け方6時台に永眠された。家族の一人は急いで鹿児島に向かっているとのことだったが「今、熊本あたりで」とのこと。うーんそれはとても間に合いそうにはない。家族すべては死に目会わせられなかったがこれが精一杯だ。合掌。

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