2020年10月10日土曜日

「韓国 堕落の2000年史」李氏朝鮮の悪弊に何を学ぶか

 アミュの紀伊國屋に行って面白そうな本はないかブラブラしてみた。すると下積みになっていた新書で「韓国 堕落の2000年史」という本が目に付いた。これが日本人の書いた本ならさほど興味は湧かなかったかもしれない。でも「崔基鎬(チェ・ギホ=ケイホ)」というれっきとした韓国人が書いていて、かなり自国(韓国)のことを自虐的に論じているのが興味を引いた。さらさらと読んでみてこれは買いとクオカードで支払った。

著者は李氏朝鮮時代の約500年の社会構造が腐っていて、それが現代韓国社会にも根深い影響を及ぼしていると嘆き警告している。儒教(朱子学)を基本とした社会が実は亡国の社会であるとは週刊ポストの井沢元彦氏の論説を読んでもよく分かるが、この本は朱子学に基づいた李氏朝鮮を徹底的に批判し尽くている。ちなみに北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)については「李氏朝鮮がまさに名前だけ変えて存続している」とし「文字通りの虐政が行われており、民主とも人民ともまったく無縁である。李朝という下敷きがなければ、北朝鮮のような体制は出現しえなかったろう」と言っている。

そして韓国については「国内における民主的覚醒が進んでいるものの、青瓦台として知られる大統領官邸への権力の過度の集中や、法を軽視した人治主義や、収賄構造が深い根を張っているのは、韓国民が李朝の呪いから抜け出すことができないからである」と評している。李氏朝鮮(李朝)とはどういうものだったのか?「李朝では、権力がすべてだった。権力の座に座った者が暴虐の限りを尽くした。法は権力者によって、好き勝手に用いられた。権力の奪い合いは、凄惨を極めた。民衆はただ搾取の対象となった」このあたりは韓ドラの時代劇を見てもよく理解できる。日本の時代劇と違って王朝での権力争いが必ずといって出てくる。両班(やんばん)と呼ばれる支配階級が党派争いを繰り返し勝った方が権力利益を独り占めする。しかし少し時代が経ち反対勢力が権力を握り返すとそれまでの支配派閥は追い出されるだけでなく多くは殺されたりするの繰り返しで、この本を読むとそれがこれでもかと出てくる。

そのため「いつ、どのように力関係が変わって、どんな憂き目に遭うか分からなかったから人々は自分だけが栄えればよいと思うようになった」「このような環境のもとでは、公共精神がそだちようがなかった」「法が軽んじられ勝つことが正義となった」「このような仕組みの中で、勝った者が法などに遠慮せずに権力を振るったことから、人々が不正蓄財や、賄賂のやり取りに長けるようになった」と李朝の悪弊が現代にまで及ぶ理由を解説する。なるほどなーだ。

崔基鎬氏は日韓併合も悪い面だけではなかったと韓国人らしからぬまともな説明をしている。こんな意見をいうものなら韓国では非国民扱いされ下手すりゃ罰せられるくらいで勇気がある。で、著者は何才かなと調べると1923年生まれだという。げ、97才?この本、いつの本かなと思ったら2001年刊行で新書版は去年出ていた。ネットで調べると著者はまだ存命のようだ。

私はつい最近2年前放送のNHKアナザーストーリー「パククネ弾劾の舞台裏〜その時 韓国は沸騰した〜」のビデオを見たばかりで、パク・クネ大統領に取り入ったチェ・スンシルが大統領の直接の補佐官をあごで使う様子が隠しビデオで撮影され国民の怒りを買った。権力者に取り入った者が法よりも力をもって利権を漁るというパターンがつい最近でも起きている、とこの本とリンクしてよく理解できる内容だった。現代物の韓ドラでもよく見るパターンで財閥が警察や検察よりも力を持って自分らのやりたいようにやるというシーンがかなり多い。もっとも最近はそれをやりこめるといったドラマもちょくちょく出てきてはいる。つい最近見た「秘密の森(2017:tvN)」がそうで、韓ドラとしてはなかなか本格的な作りで感心した。評判がよかったようで珍しくPART2が作られ本国では最近終了したばかりのようだ。

そしてこの本は日本国民に対しても警告をしている。李氏朝鮮は前王朝である高麗の武将李成桂(イ・ソンゲ)が反旗を翻し政権を握ったために武力を持つと自らの政権が危ういと考え正規軍を持たなかった。国を防衛するよりも自国軍の存在を警戒したのだ。いざというときは宗主国である明が助けてくれる・・はずだったが、そんなすぐに助けてくれるはずもなく王様やその配下の役人らは秀吉の朝鮮出兵時や清国の侵攻時には人見を置いて王宮を逃げ出している。

李氏朝鮮は中国への卑屈な服従関係を覆い隠す名分として「慕華思想」という言葉を用いたそうである。誇りを失った李氏朝鮮は結局、亡国しかなかった。氏は言う。「今日の日本では、平和主義が李氏朝鮮の慕華思想に相当するようになっている」そして「もしかすると、李氏朝鮮の歴史から教訓を学ばねばならないのは、韓民族だけではなくて、今日の日本国民も同じなのではないかと思う」と言っている。いや、耳が痛いどころか心にぐさっ、だ。非常に説得力がある。

はっきり言えば現在の日本はアメリカの属国である。少なくとも軍事的にはそれで間違いない。アメリカのご機嫌を伺わないと自分らでは何も決められない。他山の石ならぬ他国の病は自国の問題も浮かび上がらせてくれている。

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