2024年10月7日月曜日

この写真の人は病気か健康か

 夕方、院長室に届けられた封書を見て、私はげんなりとした。「はぁ・・」

それは某女性患者から送られてきたもので、内容は見ずともおおよそ推察できるもので、開けてみてもやはりそうだった。放射線被害妄想の患者からなのだ。これまで何度かこの話題を取り上げた気がする。10年以上も関わって来ていくら説明しても自説(放射線に当たって自分は被害を受けている)を曲げず、いったん診察を始めると1時間以上も席を立とうとせず、ついには当院が診察拒否を宣告した。にも関わらず受付を無視して診察室に入り込んだりもした。県や保健所にも駆け込んだらしく「なぜ、診察を受けないのか」と質されたりもしたが、証拠とともにきちんと説明して事情は理解してもらえている。噂では姶良郡内の他医療施設も受診しては同様の訴えを繰り返しているらしい。当然精神科にも行ってもらったが治っていないようだ。当院には受診させてもらえないのでこうして手紙や電話(さすがにこれはもうかかってこない)などでいろいろと言ってくるのだ。また溜息が出る。「はぁ・・」

今回はこれまで本人の口から聞いていた「私だけではなく同じ大学研究室の女性も放射線被害にあっている。そのせいで顔が黒くなっている」という事実(?)の証拠写真もプリントされていた。それを見て口があんぐりだ。若い夫婦とベビーカーに乗った赤ちゃんが写っていて、そのママを「研究室の女性、日焼けのように色が黒い」と書き記してあった。じっと女性の顔を見る。くったくのない笑顔でそんなに肌も黒くない。健康そのもののように見え、しかも幸せいっぱいという表情である。とても放射線被害を受けている人には見えない。↓はネットから拾ってきた写真だがこの写真と大差ない。

もう一枚は大学の芝生の庭だろうか、骸骨模型を抱っこするようにこちらを向いて笑顔を見せている別の若い女性の写真だ。これには「隣の研究室の女性、服が電磁波で波打っている。放射線れと強度が分かる」とあった。はあ?その服は特に波打っているようには見えない。それがどうして強い放射線漏れが分かるのだろう。可笑しぎて本当に笑ってしまった。職員5、6人にこれら写真をまず見せてどう思うかと尋ねた。みんな「健康そうでいい笑顔ですね」「特に変わったことはない」などの感想だった。この患者さん、普通のものをみても頭の回路で異常とする認知機能がおかしいのかもしれない。ともかくも私や当院ではどうにも埒があかない患者であるのは間違いない。

これまでの経緯から当然、返書する気もないし無視することにした。ただ、カルテには経緯を書いておかねばならない。カルテで振り返ると、最近は半年おきにこのような手紙、封書が届いているようだ。来年の春頃にはまた日記ネタになるやもしれない・・。

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