2019年7月8日月曜日

それってギランバレー

朝、登院前に5階病棟看護師から連絡があった。某入院患者の「病状が心配だから他院に紹介か転院かして欲しい」とその奥さんが訴えているという。それで到着早々病棟に来てくれと。しかし私は拒否した。無論、診察や家族との面談をしないということではない。朝礼もあるし緊急を要する事態じゃない上に朝の採血結果もまだ出ていないはずで朝礼終了後に行くと伝えた。この場合、家族の心理状態がそうさせているのだ、緊急事態に陥っているのは患者ではなくて奥さんの気持ちなのである。

それはともかく数日前に下肢の発赤、腫脹で炎症反応も高く一応蜂窩織炎として入院になった初老の患者であるが、四肢は動かせるも力が入らず自宅トイレには這っていくほどだった。頭のMRIを撮り脳外科に読影依頼するも問題はないという。ちょっとすぐに説明できない症状で、私も気にはなっていた。入院して箸も上手く使えないようになり奥さんは不安が増し「この病院ではだめだ」と思うようになったみたい。私も自分で治療できる自信はなく紹介するのをためらう理由はなかった。奥さんは「大学病院か鹿児島市立病院か紹介出来ませんか」とそればかり繰り返し言っているそうだ。

改めて病状経過や採血結果も踏まえてこの病気を見直してみた。蜂窩織炎は最初あったかもしれないが今はほぼ改善している。問題は神経症状が前面に出ていることで、紹介するにしても神経内科専門に診てもらうべきだろう。大学病院は紹介するのにやや敷居が高い。市立病院に紹介するくらいなら近くのサンキュー病院でも何の問題もない。神経内科専門医師がたくさんいる。5階病棟でそんなことをつぶやいていると看護師の誰かが「ギランバレー症候群じゃ・・」と言ってくれた。はっ!そうよそれ。症状や病状経過がいかにもそれっぽい。

そこからフル回転で紹介状を書き、ソーシャルワーカーへ連絡し転院を受け入れてくれるよう頼んだ。うちわの話をするとサンキュー病院には「ギランバレー症候群だと思うが診断が付いていない」と頼むのがコツだ。完全に診断が付いて治療を頼むというとかなり日数を待たされる可能性がある。奥さんにも説明し、まずは近場のサンキュー病院、そこがダメならお望みの市立病院他をあたると話し納得してもらった。それが意外に早くサンキュー病院受け入れOKで午前のうちに転院が出来た。

その後、やはりギランバレー症候群であったとの報告を受けた。難治性疾患に指定されており治療は神経内科専門で行うがいい。それにしてもあの時「ギランバレー」とつぶやいた看護師は誰だったかな?バタバタしていて気がつかなかった。看護師さんの意見は決してばかにならないものなんだ。

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