2018年11月7日水曜日

隣のおばさんと週刊誌のタッグに負けるな

今日は「立冬」なんだとか。で、昼の最高温度が鹿児島は25℃を越えていて「夏日」だったんだってさ。どっちがホントだっ!

外来でPPI(胃潰瘍や逆流性食道炎に使う胃酸分泌阻害薬)を飲み続けるといけないと隣のおばさんに言われ心配だという高齢女性がいた。その次には眠剤を飲んでいるが飲み続けると痴呆になると隣のおばさんに言われ心配だというこれも高齢女性患者がいた。共通するのは週刊誌情報を元に隣のおばさんから聞かされ医師の処方に疑念を抱いていることだ。前者は内服を止めると胸焼けが起きるし後者は眠れなくなる。内服すればどちらも症状は改善する。

眠剤の患者なんか調べれば20年近く内服し続けているがいたってまともな方だ。私は「心配しないで飲みなさい。週刊誌の報道は一部の極端な事実を誇張しているだけです」と言ってあげた。全く隣のおばさんの威力がすごいのは知ってはいたがそこに最近は週刊誌の扇動的な報道の脅威も加わって医療現場はやりにくさを感じる。以前書いた「「週刊現代」のいうとおりにしたらぁ〜」はこれまでのこてる日記のアクセス数第3位にもなっているくらいで一般人の関心が高い。

今年10月27日号の週刊現代にもその特集が出ていた。鎮痛薬の代表のロキソニンに対して「飲み続けると、胃の粘膜が荒れて、出血する危険性があることはこれまでも注意喚起されていたが、それに加えて『腸閉塞』の副作用が起こることも判明した。ボルタレンも同様だ」とある。それで言い切ってしまっているので読者は不安になるしもうこの薬は止めようと思うに違いない。私に言わせると胃が荒れるの下りはその通りで特に中長期にわたって内服する患者には必ずその旨を説明している。しかし腸閉塞になるケースは小腸にも潰瘍を起こすからと考えられるがとっても稀なケースで私は経験がない(潰瘍はある)。しかし記事は飲めば必ず腸閉塞を起こすかのような書き方だ。心配になるわな。ロキソニンは今や医師の処方箋なしで購入できる薬スイッチOTC(=元来医療用医薬品として使われていた成分の有効性や安全性などに問題がないと判断され、薬局で店頭販売できる一般用医薬品に転換(スイッチ)されたもの)だ。基本的には安全な薬なのだ。よく使われるがゆえにちょっとした傷を見つけては不安をあおり、また(雑誌を)買ってもらおうという魂胆だと見抜かなきゃ。

この他にも有名薬の稀な副作用をやり玉に上げているが、糖尿病薬もよく使われるがゆえにたびたび批判している。そして「そもそも糖尿病は薬に頼るのが間違い」と言い切るエライ先生の意見を載せている。「私は68才で、52才の時に糖尿病と診断されましたが、薬は一切使っていません。食事療法と運動だけで改善しました」とおっしゃるのが「日本糖質制限医療推進協会代表理事」の京都の高雄病院理事長の江部康二センセイだ。確かに「食事」と「運動」療法、私も真っ先にそうしなさいと言うほど大事ではある。でも現実それだけしか言わないでいると1年、2年どころか5年も10年も糖尿病悪化を放置している患者さんがほとんどだ。糖尿病は何年も自覚症状がほとんどない。そうなると人間はついついそのまま放置する動物なのだ。悪化してまたやって来た時には動脈硬化はかなり進み手遅れである。従って糖尿病改善しない人には内服も勧めている。その副作用?糖尿病放置の主作用と比べれば1/10も発生しない代物だ。まるで手術必要な胃癌になった人に「手術するると術後の腸管癒着があるから勧められません」と言うようなもの。副作用を気にして糖尿病の主作用を放置するな!

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