2025年5月29日木曜日

その人を運ぶのは、必要か不要か

夜は霧島市消防署の会議室で姶良霧島伊佐地域の救急搬送に関する協議会のワーキンググループ部会に出席した。今年1月末にもあって今年はまだ数回が予定されている。

人生の終末期にある人が心停止など起こし家族や施設の人が救急車を呼んだとする。要請を受けたら救急隊は必ず出動する。そして患者を救急病院へ搬送するのが当たり前の手順だ。だが、事前に患者と家族がかかりつけ医と相談していてその様な場合は無理に心肺蘇生は行わないと取り決めしていたら、その証拠(文書が望ましい)が確認され、かかりつけ医などに即連絡し確証が得られれば救急隊は患者を搬送しなくてよいという取り決めを作ろうとしているのだ。東京や山梨ほか都道府県ではすでにそれが現実化している。だが、癌や老衰などで望まない心肺蘇生をしないのはいいとして、窒息や外傷などで同様の瀕死状態になったときはちゃんと蘇生行為を行うのが当然で、無論救急隊は搬送や蘇生を行う。その見極めも大事になるし、かかりつけ医に連絡がつかない時どうするかなど検討事項が結構あるのだ。
会では霧島、姶良、伊佐地域からドクター、救急隊員、看護師、保健師、そして今回は弁護士も参加していた。1時間半以上、かなり熱の入った検討、意見などが出され、有意義な会だった。私はメモを取りながら論点を頭の中で整理していった。来年4月にはこの体制が姶良霧島伊佐地域でスタート出来るようにしていく予定だ。

つい1週間ほど前、ある施設から心肺停止の患者が運ばれてきて、当直医が施設職員に「心停止時の対応は?」と施設職員に尋ねると「フルサポートでお願いいたします」とのことで気管挿管、心臓マッサージ、人工呼吸器装着とやって入院になった。翌朝、私が引き継いだのだが、やや遠方の家族が1時間ほどして来院した時、人工呼吸につながれている患者を見て絶句したらしい。なんと施設職員が勘違いしていて、その患者は実際はいわゆるDNAR (Do Not Attempt Resuscitation)=心肺停止時に心肺蘇生を行わないという方針で決まっていたらしいのだ。全く真逆の医療行為を行ったことになる。でも心拍が戻っていたので私が引き続き診たのだが結局は亡くなってしまった。

もし、事前にDNAR だとしっかり取り決めがなされ、救急隊が施設に到着し確認が出来れば来年4月以降はこの患者さんは運ばれず、いったん施設で安置され、かかりつけ医が死亡確認してから葬儀屋に運ぶということになる。それを本人家族も望んでいたということだから一番いい結末になるだろう。

しかし簡単に書いたが、これまでとは違う取り決めをいざ実行するとなると1年以上、5、6回の会議を重ねる必要があるってこと。この対応がマスコミなど通じ一般の人たちにも浸透すれば患者も家族も救急隊も病院もお互いがそれほどつらい思いをせずに済むと思う。正直、最初はやや面倒な会への参加を頼まれたと思ったが、なかなかまじめで住民や医療関係者のためになるものなんだと今は実感している。いやー、今日は珍しくまじめなお話でした。

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