2020年12月17日木曜日

働き方改革の間(はざま)で

 昨夜は当直だったが救急や外来は一人も患者が来なかった。では、楽勝だったのかというとさにあらず。午前2時半ごろ4階病棟のウクノーダNsからピッチに連絡あり「フォエバサンNsが心窩部痛で苦しんでいます」だと。患者じゃなくて職員かい。結構痛がっていて空いている個室のベッドでうずくまっていた。診察後、注射と内服の指示をした後、当直室で休むことにした。ゆっくりシャワーも浴び、朝まで一眠りできるかと思いきや・・。

午前4時頃だったか、また4階のウークノダNsからピッチに連絡があった。先のフォーエバーさんの件かなと思ったが、「XXさんが下血していて大変です。見に来て下さい」と。うわ、何でこのタイミングで下血なんかと思っても実際そうなのだから仕方ない。見に行くと確かにどろどろした赤黒い血が出てオムツを汚している。この時間が日中なら大腸内視鏡をすぐに指示するところだが今はスタッフが足りない。まだしばらくは点滴などで様子をみられると判断した。すべては夜が明けてからだ。

朝一でXXさんのまずは上部消化管内視鏡(胃カメラ)から始めた。胃や十二指腸に潰瘍が散在している。この中のどれかから出血したのか?しかしはっきりこれといった出血点は見つからない。十二指腸潰瘍が大きく、少し疑わしい部位にクリップを掛けたが、本当の出血源はきっと大腸だろうとこの時点で推測でき、排便を促す前処置なしですぐに大腸内視鏡に移った。

入れてみると、やはり血液がいっぱい付着している。驚いたのは直腸からS状結腸にかけてそこそこの潰瘍が多発していたことだ。この中のどれかから出血したに違いない。こうした潰瘍の場合、出血部位は直腸に多い。で、観察はS状結腸までにとどめ、ゆっくりスコープを引いてくると・・肛門直下にそれはあった。潰瘍の中心に血餅のようなものがくっついている。今は血が止まっていて露出血管を塞ぐように凝血しているのだ。何もしないのならそっとしておくのがいい。しかし私はその凝血塊をスコープ先端で剥がした。そのせいでドクドクとまた出血してきた。昔ムッちゃんNsが「こてる先生はわざと出血させるから(イヤだ)」てなことをよく言っていた。確かに止まっているものを出血させるのは怖いが、出血源ははっきりさせないと確実に止血させられないのだ。

確実に止められる自信がないとこのように出血させるのは良くない。この後、HSE(高張エピネフリン液)を局注し、出血の勢いを弱めさせ、クリップをうまく掛ければ止血できる。それで下の画像写真にもあるようにきっちり止めることが出来た。↓。

この患者さんに都合1時間以上かかったので、人間ドックや一般患者の内視鏡はクニンダDrやエイエイコーDrに任せていた。遅れを取り戻すべく私も内視鏡検査を次々にこなしていった。昼休み、午後に1人予定の大腸内視鏡検査者を残して一段落となった。

医師の働き方改革が検討されてすでにどのくらいなるのか、つい最近の報告では2024年度から連続勤務時間を原則28時間にすると決まったらしい。以前は当直明けも翌日の夕方まで仕事をしていた。今は翌日午後には帰っていいことになっている。それが帰らねばならなくなるわけか。今回は残り1人の内視鏡は私が外来で組んだなので私が検査するが、3年半経った頃は「後はよろしく〜」って帰ることになるんかな。ま、それもいいかも。何でも自分でやらねばならないということはない。検査をするDrは他にもいるのだからね。

本音は当直が明けたらそのまま帰りたい。しかし前日から深夜にかけて診た患者さんは翌日午前までかければ診断、治療が何かとやりやすい。今日なんか特にそうだ。してみると28時間連続勤務の制限はまずまず理にかなっていると思ったことだった。

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