2018年3月7日水曜日

ごろ

水曜は外来担当で紹介患者も何人かいた。その中に90才を越える高齢女性患者がいたが紹介状の生活歴がやけに詳細で面白かった。

・・もとは鹿児島生まれだが父の転勤で各地転居し小学3年から終戦までは岐阜で育った。終戦後まもなく鹿児島は姶良郡某村の男性と結婚することになった。相手は12人兄弟の大家族な上に鹿児島の方言が全く分からず、姑や小姑、村の人から余所者扱いされた。しかも鍬や鎌など扱ったこともなかったため嫁いで間もなく坐骨神経痛になった。すると「ふじっごろ(怠け者)病」と言われるも意味が分からずニコニコしていたところ、「あそこん嫁はホがなか」と住民会議にかけられたという。「ホがなか」は「どうしようもない(アホ)」の意味だがそれもよく分かっておらずかえって助かったという・・

ああ、いかにも昔の鹿児島の農村に紛れ込んできた「余所者(よそもの)」の話だわぁー。「ふじっごろ」という言葉は初めて聞いたが「ふゆしごろ・ふゆっごろ 」のことで「不精者」の意味のようだ。何々ごろというのはその人を良く言わない時に使う代名詞で、西郷どんも島津久光公を「じごろ」=地ごろ=田舎者と呼んで不興を買い、島流しの憂き目に遭うエピソードがある。他に「飲んごろ=酒好き」「ばくっごろ=ばくち好き」「遊んごろ=遊び好き」「いやしごろ=喰いしいん坊」「いばいごろ=威張る人」「きれいごろ=綺麗好きどちらかとえば潔癖症の人」「ぬなしごろ=能なし者」とたいていは良い風には使わない。「つましごろ=倹約者」もどちらかといえばケチの意味に使われる。

ドラマ「西郷どん」でも鹿児島弁(薩摩弁)が跋扈して一般視聴者はかなり聞き取りづらいんじゃないか。でも雰囲気で分かる程度に話しているのでどうにかなるだろう。現実はうちのカールもデンコー父や田舎のおばさんの言う言葉が聞き取れずほとんど分からなかったそうだ。でもこの高齢女性のようにその方がいいこともままある。余所者に徹していれば「まこてどげんしょもなかやっじゃ」とあきらめてくれるでしょうよ。

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