2018年3月5日月曜日

ワルイのはその治療器ですよ

この間の日記ネタ「兄貴刺す」のせいでその日のもう一つのネタを書くのを忘れていた。その日、ある高齢女性が意識消失で運ばれて来た。それが座る磁器治療器治療中、あと数分で終わろうとするころ意識を失ったという。下に落ちた物を取ろうとして頭を下にした姿勢が誘因だったようだ。救急隊到着時には意識はほぼ戻っていたがまずは病院へということでうちの救急外来へ来たというわけ。それらの情報だけでおおよそ「神経調節性失神」または「血管迷走神経性失神」だと推測できる。一過性の全般性脳血流の低下により引き起こされる一過性の意識消失で最近では「反射性失神」というらしい。結構多い病態でお年寄りに多いが誰にでも起こりうる。一応頭部CTやら心電図ほか検査をして特に異常なしだった。やはり反射性失神か。これならば入院は必要なく帰宅できる。

でもその磁器治療器って何だと尋ねると別の意味で問題があった。農協の施設にどこかの業者がその治療器を持ち込み、ただで高齢者相手に治療サービスさせているとのことだ。あは、そうやって取り込んで結局は何十万もするような効くか効かないか分からないような器械を「親切にしてもらったから」という温情につけ込み買わせる商売だよ。イヤだねぇー。ある看護師は「そんな器械だけでなく100万もする『高級羽布団』を買わせるのもある」「どうみたって10分の1もしないような値段で他で買えるのに業者の言いなりになってー」と言っていた。だいたい布団に100万もかける価値がある人ってそうはいないでしょ。でも親子や人間関係の薄くなった現代では過剰に親切にしてあげることで高齢者の信頼を勝ちえ商売に結びつける輩がいるんだ。そして首尾良く買わせたらいつの間にかいなくなってしまう。

少なくとも磁器治療器にウン十万も掛けても健康になる保証はない。それよっか病院に月に1、2回でも来た方がどれだけ体のためにいいかしれない。「おばちゃん、もうその変な治療器のところになんか行かないよ」と諭すように言ったら「もう二度と行かない」と答えてくれた。その磁器治療器が意識消失に結びついたかどうかははっきりしないが、この人の良さそうな老婦人が無駄な出費をしないのに役立てばこれくらいは言ってもいいかなと思ったヨ。

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