2019年3月12日火曜日

「なぜ、骨折に気付かなかったのですか」

先月末に私が救急外来で診た交通事故の高齢女性を診察とレントゲン、CTを撮って骨折はないと判断し帰宅させた。もっとも少しぼーっとしていたので点滴をし「念のため入院してみてはどうか」と勧めたのだが「障がいのある娘がいるので入院は出来ない」と言われ、絶対入院のケースでもないし、ならばと帰したいきさつがある。

その後特に来院することなく2週間ほど過ぎていたのだが、今日そこの娘から電話がかかってきて、「その後、母は胸の痛みがなかなか引かず苦しんでいて、今日某整形外科を受診したら肋骨が折れていると言われた。そこの先生が『何で気付かなかったのかなぁ』とおっしゃった。どうして簡単な骨折に気付かなかったのか。それとなんで点滴をしたのか」と抗議に近い内容だったそうだ。対応した看護師は「診られた先生に代わりましょうか」と話したそうだが「それは(しなくて)いい」とのことだった。

言われてカルテを見直すと、3DのCTで見やすくなった画面を再確認しても肋骨に骨折はない、念のため今日は勤務している整形外科のケンケンDrにも診てもらったが「肋骨骨折はない」との診断だった。それと点滴をしたことで何か一言言いたいらしいが、少し意識レベルが落ちている患者に点滴1本したのをどうのこうの言われたくはないな。

すると整形外科のDrから「肋骨は骨折はないが胸骨にはヒビが入っているようだ」と連絡があった。え、胸骨?見ればあはー、多分骨折あるわー。患者は左の胸上部当たりを特に痛がっていて肋骨ばかりに気を取られ胸骨は見ていなかった。ううむ、そこを指摘しなかったのは私の落ち度と言っていいだろう。娘は肋骨と言っているが実は胸骨のことかもしれず、ならばきちんとそこを話したいのだがそこに乗って来なかった。整形外科Drは週に2日しかおらず不在時は専門外のDrが交通事故や打撲を診察しているのも地方救急病院の現実なのだ。撮影画像もすべてを放射線科読影に回すわけにもいかないしー。

それ以上何事もないかと思っていた。ところが少し頭に来たのが、翌日、この娘とやらは県庁にこの一件で文句を言いに行ったらしい。県庁からの連絡でそれが判明した。おい、見落としたのが悪いのか?見落としが全て悪いなら日本中の病院が全て悪いことになる。見落とさないよう気をつけても100%完璧には出来ない。県庁に言う前にこっちに文句を言えよ、電話なんかで事実確認しないでさ。いや、胸骨骨折に気付かず指摘もせず帰したのは謝る気十分よ。でもその機会すらもらえず上級機関に頭ごなしに「なってない医療機関だ」と指導を要請する、そこは文句を言いたい気十分だぜ。

話は少し違うが、今、多くの医療機関で「患者様」なる気持ちの悪い言葉を平然と使っているが、大嫌いだ。というより間違っていると私は断言する。「患者さん」で必要十分。何度かこの日記でもそれを指摘している。厚労省が「〇〇さん」ではなく「〇〇様」と呼ぶのが望ましいと通達したのを拡大解釈し、誤って「患者様」と呼ぶようになり、言葉を深く考えない連中がそれが当たり前かと思って流布してしまっている。幸い青雲会病院ではそれはおかしいということで使わないように指導している。当然のことであった。

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