2020年6月29日月曜日

赤痢アメーバに思う

明日、久しぶりに医局会でのレクチャーが担当になり、「赤痢アメーバ症」についてスライドスピーチをする。大腸内視鏡をやっているとまれに「アメーバ赤痢」もしくは「アメーバ性大腸炎」と言われる腸炎に出くわすことがある。赤痢アメーバという原虫が口から入り大腸粘膜で栄養を取ってその際に腸炎を起こす。今回の症例は腸炎だけでなく肝臓に膿瘍まで作っていたケースだ。造影CTでくっきりと肝膿瘍が分かる↓。
どちらかのみ発症する場合が多いが、最初、肝膿瘍に気づき、問診で下痢をしていたことと数ヶ月前に大腸内視鏡を受けて「腸結核かもしれない」と他医で言われていたというエピソードでピンと来た。「腸結核」の所見はアメーバ性の大腸炎と少し似ている場合がある。検査すると案の定、びらんと排膿を伴う所見が散在し赤痢アメーバが大腸で悪さをしていた。

入院治療で改善し経過は順調であったが、実は赤痢アメーバ症は性感染症の側面があると言われている。特に男性同性愛者に蔓延する疾患として捉えられている。そのことを他のDrにも分かって欲しいと思いこの症例を選んだ。時にエイズも併発している場合もある。幸いこの患者さんはアメーバ以外の感染はなかった。ただ、同性愛者かどうかははっきり確認は出来なかった。デリケートな問題だからねぇ。東京の某感染症専門の科がある病院である3年間に診療した赤痢アメーバ症患者の半数近くが同性愛者と同定され他不明とされた人の中にもいるであろうとあった。同性愛での性行為(肛門性交)で感染しやすいわけでそこを指摘しておかないとまた再発するから医師としては本来確認する必要があるのだが・・。

赤痢アメーバ症はかつては発展途上国での経口感染が多かった。フジヤマのトビウオと言われ世界記録を更新していたかの水泳の古橋廣之進もヘルシンキオリンピックではいい成績を残せなかったが、実は遠征先でアメーバ性大腸炎に罹ったのも敗因の一因だったらしい。
メトロニダゾールという薬が著効するのでそのころすぐに治療出てきていればどうだっただろうか。いや、考えだけムダなこと。今でいえば新型コロナなんて「〇〇」という薬で治るのに当時は特効薬がなかったから・・なんていうようなものだ。その時代その時代で猛威を奮う感染症があり、人類は常にそれとの戦いを続けていかないといけない。いつかコロナも「診断さえつけば治療は楽勝」って言われる時代になりたいものだ。

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