2020年6月12日金曜日

大山鳴動して鼠一匹

今日は出血の日?そんな記念日はないけれど、そう言いたくなるような日だった。

昨日から虚血性大腸炎の患者がなぜかしら集まった(3人)。腹痛&下血が主症状だ。症状を聞いただけで「あなたは虚血性大腸炎です」と私は言い切って大腸内視鏡してみるとやはりその通りだったりした。他にHbが6.0という高齢患者が紹介されてきた。これもある意味出血の患者だ。慢性的に胃か大腸かの一部からじわじわ出血があって気がついたらひどい貧血になっている。たいていは癌が原因でその患者もやはりそうだった。

最近はまだ外来患者が少なめで、17時半の定時には帰れそうなことが多い。それでも私はこてる日記など書いたりして18時前になってそろそろ帰ろうかとしていた。すると、私のピッチが鳴ったのだが、私は無視してしまった。すでに帰宅の途についている身と思っているので他人のピッチが鳴っていると思ったのだ。気がついて取ったら切れていた。内視鏡室の佳及Nsからだった。かけ直すと「先生、新鮮血の下血の患者が来ています」だってよ。おいおい、オレはもう病院にはいないはずだぜ。でも血がお尻から出ているとなれば緊急内視鏡をしなくてはいけない。

患者は高齢男性だったが、虚血性大腸炎に付きものの腹痛はないという。うん?少し嫌な予感。というのも大腸憩室出血には腹痛はないからだ。憩室出血だと結構やっかい。腸内が血だらけで出血源が見つからず治療困難になることが多い。しかも安静点滴入院が必要だ。腸管洗浄液で腸内をきれいにするヒマはないので浣腸のみでまずは見てみることにした。

その結果は?

ない、まったく血がない。虚血性大腸炎は主に下行結腸がただれて出血するから奥にいれるとすぐに分かるがそこにも出血所見はなかった。とすれば・・痔の出血である。この人の場合は肛門が少し切れていた。いわゆる切れ痔だ。しかもすでに血は止まっていた。なーんだ、である。憩室出血だったらどうしようとか、出血ばやりの日だったから最後は大物かなんていろいろ気をもんでいたけどこれなら放置してもいいくらい。

「大山(たいざん)鳴動して鼠一匹だな」と私が言うと、佳及Ns以下スタッフは「は?」という表情だ。あれ、知らないかぁ、このことわざ。おい、ちぃたぁものの知識があってもいいぞ。あんまし本を読んでいないな。これくらいは知っておこうよ。

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