2017年11月24日金曜日

実はその患者は

昨日が勤労感謝の日の休みで明日が土曜日、そんなこともあってか今日の外来はすごく多かった。カルテがいっぱい並んでいるのでてきぱきと済ませていきたいが、内服処方だけの患者さんだけならまだしも、初診の訳の分からない患者さんが相手だとどうしても時間をくう。できるだけ効率よく診察するために診察→検査の順番を検査→診察と先に検査をやっておくこともしばしばある。看護師の問診の段階でどうしても検査が必要と分かることも多いので先にやっておくのだ。

そんなバタバタ忙しい中、今日で辞める服緑Nsが早々外来に来て私に挨拶した。おいおい、夕方でいいんじゃないのと思ったが、その時間でよかった。終業間際まで彼女と会う機会がほとんどなかったのだ。

10時を過ぎたあたりだったか、ベテランのカッチャンNsが「先生、タクシーから降りられずに冷や汗いっぱいの患者さんがいる。心血管系を先に調べておくべきと思います」と言ってきたので、診察はかなりあとになるはずなのを心筋梗塞を念頭に指示を早めに出した。先に患者さんを診るのが筋だとは分かっているが次から次へと新患が来るので検査優先にした。それに、その患者は昨夜当院を腰背部痛で受診し当直Drが腹部CTなど含めすでにいろいろ検査をし一旦帰宅させていたから、というのもあった。ただ今日は胸が痛むという。心筋梗塞を疑うも、血液検査や心電図でそれを示唆するデータが出てこなかった。うーむ、違うか。元々は脳出血の患者でリハビリによく来ている私よりも若い患者だった。気にしつつも診断を付けぬまま12時を過ぎていった。

その間も看護師らから情報が入って来る。喀痰が多くうまく排出出来ていないと情報もあった。そこでなんか違和感を覚えつつ胸部CTを撮るよう指示を出した。そうこうするうち、9時からずの外来患者もだいぶ減り、残るはその患者とあと1名くらいになり、ようやく私は本腰をいれて診察に入った。そして胸部CTを見て驚愕した。

「胸部大動脈瘤解離」

何と大動脈の直径は9cm(通常の3倍!)ほどにも拡大し大動脈弓から下は裂けているように見える。そりゃ冷や汗かくはずだ。胸も痛いはずだ。だからうまく喀痰排出もできなかんだ。そう、脳出血を起こすということはもともとひどい高血圧があったわけで、ならば大動脈にも負担がかかり動脈瘤を作る可能性は高い。いくら若いとはいえこの危ない病気は十分に考えられたのだった。そうと分かれば青雲会病院では治療は不可ゆえ、さっそく鹿児島市内の病院に治療依頼をかけた。幸い、即答とはいわないがカイリョー病院が受けてくれた。急いで画像データや紹介状、検査結果を集め救急車に乗る看護師に手渡した。すでに14時を過ぎていた。

いやー、やっぱり早めに診察すべきだったかな。カッチャンNsが早く連絡してくれたは良かったが、自分も診ていれば早く治療開始できていたかも。ま、来院後はすこし落ちついていて致命的な状態にならずにいたのが幸いだった。このいきさつを知らないホントだ外来師長が「さすが先生、そんな患者を診断して専門病院に早々と送ったんですか」と感心してくれたが、早々じゃないしたまたま幸運だっただけだ。これで良かった良かったで済ませてはいけない。そう肝に銘じたことだった(‾□‾;)。

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