2020年7月3日金曜日

人間ドックスタッフにレクチャーをする

人間ドック室スタッフに昼休みを使い教育講演をした。お題は「ピロリ菌Q&A」。ピロリ菌にまつわる様々な疑問に答えていきましょうというものだ。ドック室のスタッフに以前からスピーチを頼まれていたが、実は同じ内容を医局の先生方相手に一昨年レクチャーしていたのでそれを流用出来たので準備なしで行った。

一番最初に持って来たのが「一度除菌するともう感染しないのか」という質問だ。YesNoで言えばYes、除菌が成功すれば二度と感染しない。そもそも感染するのは赤ちゃんのころの抵抗力が弱い胃の粘膜であって大人が感染しても胃の抵抗力が強くいずれ排菌してしまう。しかし乳幼児の頃感染すると大人になっても排菌せず一生持続感染してしまい、いろいろな胃の病気を引き起こしてしまうのだ。だが除菌出来れば胃の抵抗力が勝り感染しないのである。だから一度除菌出来た人はむやみに心配することはないのだ。

次に「ピロリ菌は井戸水から感染するのか」だが、これは一応Yesにしたが内心はNoに近いものがある。井戸水がというより下水環境が悪い時代に多かったのだ。昭和20年代までは日本のほとんどの家は水洗便所ではなかった。ピロリ菌は普通は胃の中でしか生きていけないが糞便中にもしばらくは生存している。下水環境が悪いと土中にしばらく残って井戸水からの感染もあり得る。しかし多くが水洗になった今でも一定の割合で感染するケースがある。特に乳幼児への口移しでの離乳食摂取が問題だ。ピロリ菌の母子感染は父子感染に比べ6、7倍多いという。

そのほか「除菌療法時にはアルコールは飲んではいけないのか?」はこれはNoなのだが、飲んでいいのは最初に行う除菌(一次除菌)のことで、一度失敗した人が次に行う二次除菌ではアルコールは禁止する必要がある。二次に使うメトロニダゾールという薬がアルコールと相性が悪い。いわゆる悪酔いのような症状を起こすことがあるからだ。そこをきちんと説明しないと、特に人間ドック利用者には「処方もらっても1週間もお酒飲めないのでは内服したくないわ」と飲まずにやり過ごす場合が結構ある。ピロリ菌除菌出来るか出来ないかでその後の人生に大きく影響する可能性(胃がんになるならないなど)もあるのに、人間って目先の1週間の快楽の方を大事にする生き物なのだ。だから「お酒飲んでも除菌はOKですよ」と言って上げた方がその人のためになる。

他にもいっぱいQ&Aをこなし、その後延々19問まで来て終わった。が、その後も質問がたくさん出た。へー、みんな日頃利用者と接触していろいろと疑問があるんだな。当初30分程度で終わるつもりだったが50分を過ぎて午後の仕事が始まるためようやく終了した。たまにはこうしたレクチャーもいいね。また頼まれたら自分の勉強のためにも受けておこうか。
(なお、ピロリ菌についてQ&Aをよく説明しているサイトがあったので↓に紹介する。最初の質問も本当はYesNoで単純に割り切れないのだがそこもきちんと説明してくれている。http://hosono-endoscopy.com/category7/entry37.html

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