2018年10月21日日曜日

駅伝中継はスポーツ中継か?

私は普段は駅伝やマラソン中継は見ない方で、たまたまチャンネルをカチャカチャ動かしていたらTBS系列で女子駅伝中継をやっていた。すると岩谷産業というチームの選手が四つん這いになって中継地点を目指しているじゃない。びっくりしてこれはどうなるのかと注視した。

これは無理だろうて。どんどん追い抜かれている。中継地までどのくらいなんだ。近ければタスキは渡させてあげたいな。大会役員も心配そうに見守っているが四つん這いを止めさせようという態度ではない。手助けすればそのチームは途中棄権になる。選手が四つん這いになってでも継続続行の意思を示していれば手は出せない。引き継ぎの選手が見えるところにいて涙を流している。ああ、あともう少し。そして膝から血を流しながらもどうにかタスキを渡しレースは続行された。しかしこれだけ時間をロスすれば最下位もやむを得なかった。

で、このあとレースを中断させなかったことに対して非難があったと聞く。チーム監督は棄権を大会関係者に申し入れたが上手く伝わらず続行させてしまったとか、逆に視聴者は感動したとか、いやそんな美談仕立ては良くないとかいろいろ意見が出たようだ。四つん這いの本人は「続ける」といって制止を聞かなかったようで、これは駅伝の性質上そうなりがちだなと思った。15、6年前の箱根駅伝で法政大学の肉離れを起こした選手が走れなくなり監督が制止してもイヤ走るといってきかなかったのを思いだす。自分のせいで所属組織に迷惑がかかるのを嫌がるのは国民性のような気がする。駅伝という競技そのものが日本でしか行われておらずしかも非常に人気が高いというのもそれが関係しているのではないか。

今回の一件に関しては大会の棄権に関しての判断基準の問題のほか、TV中継に異議ありという意見もあった。スポーツライターの酒井政人氏はこう寄稿している。
「・・今回の件で最も問題視すべきはテレビ放映の仕方だと思っている。・・四つんばいになった飯田をカメラが執拗に追いかけ、5分近くもテレビ画面を占領することになる。実況するアナウンサーも「ここで途切れさせるわけにはいかない!」と熱い言葉を発していた。そして、タスキがつながると、「思いはつながった! 岩谷産業!」と興奮気味だった。・・これまで駅伝のアクシデントを目の当たりにしてきたが、選手のブレーキや繰り上げスタートなどテレビ実況は大げさにあおる傾向がある。そして、ささいなことも美談に仕立ててしまうメディアにも問題があるだろう」

うんうん、そうでしょう。きっとそれが正しい。でも、TVって今回みたいなハプニング、ドラマそれが一番欲しいんだ。特に民放においてはスポーツの正確な報道よりも視聴者が関心を持つような何かが欲しい。TBSは有り難かったんじゃないかな。あの画面を見たらしばらくはどうしたって目が離せないヨ。

酒井氏はこうも言う。「駅伝は「スポーツ中継」「スポーツドキュメンタリー」「スポーツショー」のどれになるのか。「スポーツドキュメンタリー」や「スポーツショー」なら、今回のようにアクシデントのあった選手をクローズアップしてもいい。しかし、「スポーツ中継」だとしたら、今回の放映方法がベストといえるだろうか?・・「スポーツ中継」ならば、トップ争いをきちんと状況する必要があったのではないだろうか。・・創部2年目で初出場したチームが最下位に転落したとしても、本来ならニュースにならないのだから」と。

でも、一般の視聴者が一番求めているのはきっとドキュメンタリーかショーの方でしょ。もしあの四つん這いシーンをすっぽかして「ここでトップが入れ替わりました」と言って先頭集団の画面に切り替えたら、きっと視聴者から抗議の電話が殺到したはずだからー。

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