2017年8月2日水曜日

ガイニン

8月に入りさっそく当直だ。一晩で脱水症や尿管結石の患者がそれぞれ2人来た。ま、それらは私でもなんとか初期対応は出来る。でももう1人、30代女性の腹痛患者には緊張した。下腹部痛とのことだが、急に痛みが生じかなり強い痛みとのこと。そこで血便でもあればよくある虚血性大腸炎が疑われるし、水様便なら急性腸炎、右下腹部に局所の痛みがあれば虫垂炎など考えられる。尿管結石もありうる。しかし産婦人科系の痛みなら・・。この人は問診や既往歴からそっち方面を考えるべきで、まずはいの一番に妊娠反応を検尿で調べた。すると、案の定陽性反応が出た。となれば、ガイニンか・・。

子宮外妊娠(外妊=ガイニン)は受精した卵子が子宮内に収まらず、主に卵管などで停滞し腫大した卵子のせいで出血などが起き腹痛や急な血圧低下(ショック)など起こし放置すれば命に関わる怖い病態だ。いきなりレントゲンやCTするのも放射線のこともあって腹部エコーを自分でやってみた。しかし考えてみれば私はガイニンのエコーなんてやったことなかった。さっとテキストで典型例画像を確認し、やってはみたが確証は得られなかった。腹水が溜まっているのがわかり、子宮内に卵子がないことも分かった。これはやはりガイニンが疑わしい。このまま婦人科の病院に紹介してもいいが、ある程度確証が欲しく、腹部CTを撮らせて欲しいと患者に頼んだ。承諾が必要だったのは、実施するということは放射線を妊娠初期に結構浴びるため出産をあきらめることになるからだ。すでに子が4人いる患者は承諾した。結果、腹水と見えたのは血液と分かりほぼガイニンに間違いないと診断できた。ここまで来るのに結構ストレスを感じた。専門外の緊急の病気を診断せねばならかったからだ。消化器系の救急ならこの人より重症でも気持ちに余裕はある。

このあと、受け入れ先の病院にやや戸惑った。近くのクリニックは2軒ともスタッフ不足や機材不足で対応できず、某大学病院は受けないこともないが・・と煮え切らなかった。結局、ナウQゼロ病院が受けてくれた。ふぅ、助かった。この患者を産婦人科以外のどの病院が診れっていうんだ。で、担当の女医と話しをしていて、あれ、このDrノブちゃんじゃないかなと気付いた。連絡し終わった後、「ところで先生のお名前はノブちゃんですか」と尋ねたらやっぱりそうだった。「こてるです」と言うとすぐに分かって「あああー」と驚いていた。彼女、大学時代のバスケ部の後輩だったのだ。同窓会でも会うことはなくて久々に話したが昔とほとんど声は変わっていなかった。ガイニンであってもこの患者の頻脈や血圧が安定しているので「それほど心配しなくても大丈夫でしょう」とのこと。転送用の救急車を依頼しカッコちゃんNsも付き添って乗っていった。

かれこれ2時間ほど、慣れない疾患を最初から診察、検査、診断、対処までするのは緊張でどっと疲れたわー。

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