2014年6月28日土曜日

心拍再開

朝、連絡を受けた救急心肺停止患者はまだ30才代前半の若者だった。詳しいことは分からない。皆と「いったいどうして心肺停止になったのだろう」と推測し合った。母親がアパートに行ったらそうなっていたということくらいしか伝わってきていない。薬物中毒か、なにか自殺でも図ってのことか。ともかく気管内挿管、ライン確保などの準備をして待った。

救急隊が到着し、即蘇生に入った。心臓マッサージは当然続け、強心剤を打ち、挿管チューブは人工呼吸器につなぐ。患者は高校のころから1型糖尿病に罹りインスリン治療を続けていたということだった。これまでも低血糖発作で意識が遠のいたことが何度かあるとのことですぐに血糖値を調べた。しかし測定不能。低血糖ではなく逆に高血糖過ぎるということだ。点滴次いでに当然採血もしていた。心臓マッサージが続き、何度目かのボスミン注で心拍が再開した。脈も触れる。もしかしたら蘇生できるかもしれない。母親に心拍が戻り入院の上で管理し回復を待つと伝えた。しかし数十分後また心拍が止まりマッサージと注射を繰り返した。採血データでは極端な高血糖と酸性の血液(アシドーシス)、高カリウムがあり糖尿病性ケトアシードシスの重症タイプと分かった。もしかしたらインスリンを自己判断で打っていなかったのか・・。

心拍がまた戻り血圧も維持出来たので病棟に上がってもらった。しかし1時間もしないうちに心拍停止となった。病棟看護師が交代で心臓マッサージをし30分ほどでまた心拍再開した。心臓はもともと正常で強かったのだろう。80才90才のお年寄りではこうはいかない。午後1時半になっていて土曜の勤務も1時間オーバーしており後を当直医に引き継いだ。家族には相当厳しい旨説明した。気がかりは母親が「昨夜から連絡ないので今朝様子を見に行ったのだけれどもう少し早く行っておれば・・」と自責の念にかられている様子だったことだ。気持ちは分かるがお母さんには責任はない。自分を責めすぎないように。

この後、5、6回以上心停止と復活を繰り返しおおよそ12時間後ついに心拍戻らず亡くなったという。心臓マッサージは短くて20分、長くて40分かけ心拍再開にこぎ着けたとか。看護師たちには頭が下がる。人が亡くなるのは誰でもそうだが特に若い命が失われるのつらいことだ。合掌。

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