2023年12月9日土曜日

なぜエンゼルスがダメでドジャースがいいのか

大谷翔平のFA行き先がロサンゼルス・ドジャースに決まった。いや〜ホッとしたよ。2年前に大谷がドジャースのユニフォームを着たらというコラージュ画像を見たときに「すごい似合っているナ」と思い、「いずれはドジャースに」と願っていた私だったからね。今回のドジャース入りはまずは最高の選択だろう。11年連続プレーオフに進出しているし、大谷のこの10年契約は長期契約に盛り込まれることが多いオプトアウト(契約破棄条項)が含まれていないそうでこれはほぼ生涯契約だ。ということは、大谷が怪我をしない限り10年はメジャーリーグの試合観戦を楽しめるってことだ。最近の私は野球と言えばソフトバンクを始めとした日本プロ野球よりメジャーリーグだったから。

それよりも、何にホッとしたかって最悪の選択エンゼルス残留がなくて良かったってことだ(さすがの里崎智也も『エンゼルス残留予想』は当たらなかったナ)。この3年間メジャーリーグの試合、特に大谷のいたエンゼルスの試合を見てきて、「ドジャース入りはなくてもまずはエンゼルス以外のチームに移籍してくれ〜」と思っていた。今の大谷にとって契約年俸がメジャーリーグトップになったというのは大事なことではないはずだ。まずは勝てるチームに所属し、その中で優勝を目指し自分のパフォーマンスを最大限に発揮すること、それに尽きるだろう。そのためにはドジャースが最適なチームなのに対してエンゼルスはなんとも中途半端なチームだった。大谷がいるがゆえに応援してきたこのチームのふがいなさに何度「はあ?」「何で?」「もうやってられない」と歯がゆい思いをしてきたことだろう。エンゼルスってチーム、実は年俸総額は今季開幕時点の年俸総額はメジャーリーグ全30球団中6位の2億1200万ドル(318億円)余りと相当お金をかけているのだ。にもかかわらずこの10年、ドジャースとは正反対で一度もプレーオフにすら進めていないのはなぜなのか。

メジャーリーグ解説者大冨真一郎氏が新潮社フォーサイトの先月11月9日の記事でその疑問に応えてくれていた。

「今季のエンゼルスはけが人も多く運が悪かった面もあるが、それ以上に、エンゼルスという球団が優勝に向けた長期的なプランを持っていない、という点を強く指摘したい。

エンゼルスは2011年にトラウトがデビューして以来、主力になるような若手を育てられていない。にもかかわらず定期的に(無計画に)大物選手と大型契約を結んできた。常にそれなりの戦力を維持しているため悪くても90敗程度で踏ん張るが、その結果としてドラフトでトップ5指名権を得ることもなかった。漫然と優勝を狙い続けた結果、常に中途半端な位置にい続けたのがこの10年間のエンゼルスだったのだ。

その悪いところが凝縮されたのがこの夏の動きだった。8月以降のスケジュールが厳しいことは分かっていたのに、ポストシーズン進出へ当落線上の立ち位置から勝負を決断。将来を支えるはずの若手選手を手放して戦力補強をしたが連敗を重ね、大谷も故障。結局1カ月も経ずしてトレードで獲得した選手を手放すことになった。勝つ準備ができていないのに勝負に出て、目先の勝利も将来の勝利も失ったのだ。

2026年まではトラウトとレンドーンの2人合わせて毎年約7500万ドル(112億5000万円)を払うことが決まっている。こうした契約も足かせになっているため、少なくともこの先3年間はエンゼルスが快進撃をする可能性は低いと考えられる。

ただ、これを現GMのペリー・ミナシアンだけの責任とするのは可哀そうだ。むしろ原因は、我が強い割にケチな面がある球団オーナーのアート・モレノにある。選手獲得に口を出すが、戦力を整えるために我慢の期間を作るのも嫌。かといってヤンキース(約2億7700万ドル=約415億5000万円)やメッツ(約3億3000万ドル=約495億円)のような莫大な年俸総額まで予算を増やすこともしない。これでは強い球団を作るのは難しいし、能力の高いフロント人材は集まらない」

私がイライラしていた理由がすっきりする納得の解説だ。そして、それとは逆の成功例のチームを以下に挙げている。

「フロントの長期計画の成功例として分かりやすいのは藤浪晋太郎が所属するオリオールズだ。2018年11月にGMに就任したマイク・イライアスは翌年のドラフトで、現在主力になっているアドリー・ラッチマン捕手やガンナー・ヘンダーソン遊撃手らを指名。さらに、ローテーション投手をトレードに出して当時エンゼルス傘下のマイナーリーガーだったカイル・ブラディッシュ投手を獲得するなど、メジャー未経験の若手を集めた。

将来に向けて有望な若手を収集することに重きを置いた結果、オリオールズは2019年、2021年と100敗以上を喫するどん底を味わった。ラッチマンが昇格して上昇機運が盛り上がりポストシーズンのチャンスがあった昨季ですら、8月に抑え投手をトレードに出して若手を集めた。そして今季、ヘンダーソンを筆頭に次々と有望な若手が昇格してチームは一気に地区優勝を果たしたのだ。

大事なのは、この101勝をあげた戦力が30球団中29位の年俸総額6100万ドル(約91億5000万円、1ドル=150円で計算、以下同)弱でまかなわれているという点だ。主力選手の多くは年俸調停の権利を得ておらず、FAまで時間を要する選手が大半なので、過度な出費を伴わずに現在の戦力を数年間は維持できる

しかも、オリオールズは決して貧乏な球団ではない。イライアス就任前の2017年には年俸総額1億6400万ドル(246億円)余りを負担しており、当時の水準に戻すと考えただけでもビッグネームのFA選手を3人は獲得可能だ。こうして優勝に向けた最後のピースを揃えてワールドチャンピオンを狙うのが定石である」

そして強いチームを作るにはいかにビジョンを持った優秀なフロントマンがいることが大事だと以下に語っている。

「前出イライアスは2010年代にアストロズをどん底から黄金時代に導いたジェフ・ルーナウ元GMの片腕で、ルーナウが用いた手法をオリオールズで再現してみせた。イライアス自身、イェール大卒という頭脳の持ち主であることに加え、その相棒として元NASA(米航空宇宙局)のエンジニアが10年以上付き添っている。

今季、ワールドシリーズを戦ったレンジャーズのクリス・ヤングGMとダイヤモンドバックスのマイク・ヘイゼンGMは共にプリンストン大の出身という高学歴だ。過去11シーズンで10度の地区優勝と圧倒的な結果を残しているドジャースの編成トップ、アンドリュー・フリードマン(2014年10月就任)は元ウォール街の投資銀行アナリストから野球界に転身した経歴を持っている。フリードマンは2005年に28歳の若さでレイズ(当時の名称はデビルレイズ)のGMに就任すると、球界のお荷物といわれた球団を立て直して「低予算でも勝てる」組織を作り上げた。その実績を買われてドジャースに引き抜かれ、現在の年俸は非公式ながら1000万ドル(15億円)ともいわれている。強いチームには一流の頭脳を持つ優れたフロントが欠かせない」

最後に大冨真一郎氏はFA宣言したばかりの先月11月初めの大谷に対しこう呼びかけていた。

「大谷がWBCで見せてくれた熱い戦いを望むならば、ぜひ優れたフロントとオーナーが良好な関係を保っている球団を選択してほしい。球団としていかに優勝を狙える戦力を組み立てて、その1ピースとして大谷の才能を生かせるか。そのビジョンが明確な球団と契約することができたなら、世界の頂点で雄叫びを上げる大谷をもう一度見ることができるのかもしれない」

常に優勝を求められるニューヨーク・ヤンキースやオーナーが金満で高額選手獲得ばかりしているニューヨーク・メッツがこのところ優勝に縁がないのも、お金がいっぱいあるはずの日本の読売ジャイアンツがなかなか勝てないのも優秀なフロントがいないか、優勝を目指すために明確なビジョンが欠けているからかなんだろう。プロ野球というもの、つくづく選手だけでは勝てないとよく分かる記事だった。

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