2023年11月3日金曜日

ただ者にあらず、里崎智也

Yahooニュースでの元ロッテ捕手で日本代表でも活躍した里崎智也47歳の話題が面白かった。「引退後も『1億円プレーヤー』元プロ野球選手・里崎智也さんの資産形成」というタイトルで彼のお金の稼ぎ方、使い方について毎日新聞が特集したものだ。

現役引退から7年で年商1億円を突破し、成功の秘訣(ひけつ)を明かした著書「YouTube『里崎チャンネル』はなぜ当たったのか 再び1億円プレイヤーになるまでにしたこと全部」(徳間書店)が話題となり、「一度も社会に出たことのない自分が、ゼロから築き上げた」という稼ぐための戦略とはという内容で、どんな資産形成をしたのかという質問に、彼の堅実性と物事への視点への確かさが感じられた。

ーどんな資産形成をしていたのですか。
 ◆入団当初から毎月10万円、自動引き落としされる積立貯金をしていました。いつクビになるか分かりませんから。もし5年でクビになっても計600万円たまっている。これを元手に、学校に通う、資格を取る、頭金にして事業を始めるなど、リスタートに使えるじゃないですか。でも実際は16年現役を続けられたので、合計で2000万円くらいたまりました。 
ー堅実ですね。お金を持っている人には投資話が寄ってくると聞きます。
◆そういう話はいっぱいありましたけど、相手に説教してあげました(笑い)。「そんなにもうかるなら、あなたがやれば?なんで人に勧めるのにやらないの?」って。投資の知識もないし、リスクがあることはやりません。それによっぽどの大金をかけないとリターンも少ないわけですよね。数百万円プラスになるくらいなら、野球の練習をして、ホームランを一本でも増やした方がよっぽど稼げます。僕にとって価値やメリットがなかったですね。

簡単には下ろせない積立貯金は、カールに言わせると「結婚以来毎月続けている。いや、一度だけ出来なかった月があった。それは子どもたちとディズニーランドに行った時で、その時は一時的にお金がかかったが、こんな機会はそうそうないだろうから」と思ってのことで、怪しい投資話にも一度も乗ったことはない。里崎さん、私たち夫婦に似ているね。

引退後の彼は「野球解説を軸に、スポーツ紙の評論やラジオのパーソナリティー、テレビのコメンテーター、講演や野球教室など何でもやりました。最初の1年間は言い値で引き受けました。だって僕の相場が分からないんですもん。僕と野村克也さんが同じなわけはないので」と変なプライドは捨てて新しい人生に向かい合った。プロ野球選手が引退後にアマで会社に入って野球を続けられている人に比べ差を付けられてしまうのが、以下のインタビューでよく分かる。

ー引退後、プロ野球の指導者を目指すという考えはなかったのですか。
 ◆全くなかったですね。僕は引退時に一定額の資産形成ができていたので、切羽詰まって生活のために仕事を探さないといけない状況ではありませんでした。コーチになったとしても毎年契約更新があって、いつクビになるか分かりません。チームの成績に関係なく、上層部次第で契約更新できるかどうかも分からないんです。ボーナスもないし退職金も支払われない。こんな不安定なのに(ヘッドコーチを除く)コーチの相場は800万~1000万円くらい。コーチをやりたい人はたくさんいるから、給料の相場はなかなか上がらないんです。
 ーそれは意外でした。それでも、指導者になりたい人は多いのですね。
 ◆他に仕事がないからです。高卒や大卒でプロになった人は、社会経験が一度もないのに30歳前後で社会に放りだされる。でも履歴書すら書いたことがない。それだったら、野球界にいた方が環境は変わらないし、楽じゃないですか。一般企業だって、定年後に「嘱託で続けてください」と言われたら、給料下がっても続ける人は多いですよね。60歳過ぎで、他の仕事を探すのは大変ですから。プロ野球選手も同じ構図です。

野球解説をベースに仕事の幅を広げていった里崎智也。バラエティー系の番組などでも活躍しているが、自分の「幹」となることについては手を抜いていない。

ー2019年からはユーチューブを始め、21年には年商1億円を突破したそうですね。
 ◆詳しくは言えませんが、年商1億円のうちユーチューブでの稼ぎは半分以下です。成功しようがしまいがどうってことない。いつやめてもいいという気持ちで、好きなことをやっています。僕の幹は野球解説者で、ユーチューブはいろんな枝葉のうちの一つに過ぎません。
ーとはいえ、里崎さんのユーチューブでは「12球団全試合総チェック」が看板コーナーです。シーズン中に毎週12球団の全36試合をフルで見た上で週2回、各1時間ほど解説するコンテンツです。
ー大変な労力では。
 ◆こんなの誰でもできるんですよ。試合を見ればいいわけだから。でも、そんな面倒くさいことは誰もやらない。誰でもできるけど、誰もやらないことをどこまでやれるか。ここにビッグチャンスがあると思っています。
ー他の仕事で全試合を見られないこともあるのでは。
 ◆ポイントを絞って効率的に観戦することができるようになりました。でも、僕の流儀は全試合見られなかったら、ちゃんと「見なかった」と言うこと。例えば「100個ブランド品を持っている」と言っていたのに、うち1個が偽物だったとばれたとしましょう。そうしたら、残り99個が本物だとしても「他も偽物なんじゃないか」と疑われる。それは心外じゃないですか。知ったかぶりすれば、いずれ視聴者にばれて評判が落ちます。だから「できない」「知らない」「見てない」を正直に言うことが僕のスタンスです。

ユーチューブでの発言などに対する批判や中傷についてもしっかりした考え方を持っている。

ープロ野球選手とユーチューバーで共通する点はありますか。
 ◆数字が全てということですかね。再生回数や登録者数など、数字で評価されるのはプロ野球選手と同じです。(ユーチューブでの発言などに対する)批判や中傷ですか?現役時代も今も、何とも思っていません。批判するってことは、僕をいつも見てくれてるってことでしょ。「里崎がこんなこと言っているぞ」と批判しながら、僕の動画を拡散してくれるからありがたい。飯屋で、数カ月に1回来て「うまい」と褒めるやつよりも、毎日来て「まずい」というやつの方が僕は好き。それと同じです。野球選手だって、批判されても一流とそれ以下では数が全然違います。批判されるのは一流の証し。リアクションがないのが一番きついですよ。

―最後に、里崎さんにとって「お金」とは?
 ◆命と家族の次に大切なものですね。お金とスポーツの得点は「いくらあっても困らない」というのが持論です。お金で全ては買えませんが、不幸は回避できます。次の目標は、働かなくても1億円稼ぐことです。これができたら最強ですよね。具体案はまだありません(笑い)。でも引退後、社会に出たことがなかった38歳が、ゼロから築き上げて1億円稼げましたから。多くの人が「99%無理だ」と思っている夢を成し遂げる方が面白いと思っています。とはいえ、今は仕事が楽しくて仕方ないんですけどね。

里崎智也についてWikipediaで調べると面白いエピソードがあった。

「・・元々の大学志望は駒澤大だったが同学年にあたる大分の城島健司が駒澤大に進学するという情報を聞き、同大学に進学しても試合に出られない可能性を踏まえ、志望校を帝京大学に変更した。なお、城島健司は福岡ダイエーホークスからの強行指名を受けプロ入りしたため、駒澤大には進学しなかった。また、大学卒業後は高校野球の指導者を目指しており、教職課程も履修していたが自身がプロから注目され始めた事で監督から教職課程を諦め野球部の練習に集中して欲しいと言われ、高校教員を諦めている。」

自分の実力と将来性を高校の頃から考えていたということだ。志望校をサッと変えるなんて堅実性もだが柔軟性もある。また、もし大学の監督が教職課程履修を勧めていたら、そして彼がもっと堅実派だったら教員になって甲子園を目指していたかもしれない。

まあそんな里崎智也、確かに現役時代よりも引退後の方が目立っているかもしれない。最後に彼のエピソードを一つ。私が今年の野球放送で一番印象的でかつ大笑いしたシーンが彼によってもたらされた。それは日本でのWBCの試合中継中、カメラがずーーっと動いて満員の野球ファンで埋め尽くされている観客席の様子を流していたその時、里崎がアナウンサーと他のゲスト連中に向かってこう語りかけたのだ。

「ちょっと、どうでもいい話なんですけど、いいですか」
「はい、いったい何でしょう」とアナウンサー。
観客席に私の知り合いが映っていました
「?!、ホントにどうでもいいーー!」とそこにいたゲスト&アナウンサーとTV視聴者全員。

総ツッコミされていたけど、私は吹き出して「里崎智也、ただ者ではない」と感心したわ(⌒о⌒)。

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