2023年8月13日日曜日

三度目の正直の憩室出血止血

今日はお盆の入りで日曜日だが、朝から病院勤務だった。しかも救急当番日だ。当番日はカワゼンDrと二人で担当する。そのカワゼンDrから「昨日と今朝入院した2人を診て欲しいんですけど」と言われ、患者を受け持った。どちらも消化器系疾患で重症だ。そのうちの一人、Oさんは10年以上前から大腸憩室出血で何度も私が診てきた高齢男性だった。今回も下血があってヘモグロビンが何と5.4だという(正常値は約13以上)。うわぁ、輸血も必要だし、しかも今日のうちに大腸内視鏡入れて出血源を突き止め、止血しないと危ない。10年以上前、同じ病気で入院した時は、下血による貧血、血圧低下で私の目前でぶっ倒れた。ゆるりと廊下に崩れゆくシーンを今でもよく思い出す。

あれから出血源の憩室を見つけてしばらくは何もなかったのに3年前にまた下血&止血し、今度で3度目か。青雲会病院には通常より30cmほど長い大腸内視鏡を数年前に導入したのはこのOさんのために入れたようなものだ。奥の上行結腸に憩室出血があるのに、腸が長くて手前の横行結腸でよどみ、なかなか目的の部位に到達出来ずイライラしたものだった。

午前の診療が一段落したところで、内視鏡室スタッフの秋の萩君を呼んで緊急内視鏡を行った。案の定、大腸の中は血だらけだったが、ロングスコープのおかげで以前よりは上行結腸に入れやすくなった。しかし出血源憩室ははっきりしない。到達し観察するころには出血が止まってどこが原因憩室か分からないんだ。でもそこで諦める私ではない。体位を左に向けて、さらに腹ばいにしてまた仰向けにして、いったん横行結腸に戻してまた上行結腸に入れ直してと探りまくること約45分。上行結腸の中程にそれまでなかった新鮮血が出てきた。おお、これを待っていたんだ。つまりは内視鏡室検査中に再出血を促すのだ。これで止血出来る。通常は再出血させないように気を配るが、内視鏡検査中は例外、出血があるかないかで出血源発見率が雲泥の差なんである。

マーキングクリップを掛け、その後に本格的に止血クリップを掛ける。もしくは結紮ゴムで止血(EBL)するのだが、このOさんの場合はその方法はやりづらくクリップ止血にした。しかし出血の勢いが強くしかも出血部位が操作しにくい所にあり止血剤(エピネフリン液)局注で勢いを弱めてからクリップを掛けた。その時になると露出血管も縮んで逆に見つけづらくなった。出血を見つけてから50分経過し「本当に出血部位をクリッピングしたのか」と不安を抱えつつ終わらざるを得なかった。↓の写真の時は出血源を直視出来ていたがすぐに見づらくなった。

そしてその不安は夜になって的中するのだ。400mlの赤血球2パックを輸血したのに「先生!また真っ赤な血が出てまーす!」と病棟から連絡が入ったのだ。Oさんのお顔も真っ青だ。午後22時だったけど本当に悪いがまた秋の萩君を呼んで二度目の大腸内視鏡を行うことにした。出血しているおおよその部位は分かっている。今度は先端フードを変更した。少し長めで斜めタイプの憩室探索専用のものに代えたのである。もちろんロングスコープを使ってだ。上行結腸に入るとやはり出血は止まっていた。でもマーキングクリップがある。フードを当てて探ると今度は疑わしい憩室が正面視出来た。少しフード先端で押すと出て来たよ、出血がじわ〜っと。

「今度は許さんよー」

しかし皮肉なことにマーキングクリップが邪魔して止血クリップが掛けにくい。で、把持鉗子そのクリップを剥がし見やすくした。そこでようやくガッチリと止血クリップを掛けられたのだ。ふうー。終わったのは23時40分ごろ。やれやれ今日中に一仕事終えられたぜぃ。

と、まあ夜までかかって私のライフワーク(?)である憩室出血の止血はうまくいったと心地よい疲れで寝入ったのであった。

と、それでこの日記ネタをこのままアップするつもりだったが、2日後の8月15日21時20分頃、病院夜勤の看護師からの電話で一気に話が変わった。「Oさん、また新鮮な下血がしかも大量にでています」って来たのよ。まさか、そんな。しかし事実は止血がうまくいっていなかったことを示している。それで急遽、高速を飛ばしてまた緊急大腸内視鏡を行った。悪いが秋の萩君にまた来てもらった。すると、掛けたクリップ3個はそのまま残っていたにもかかわらずその近辺で下血があった。あの「うわっ、やはり出て来た!」のはたまたま憩室内に溜まっていた血が出て来ただけだったんだ(がくっ)。犯人の憩室はその近くにあり、すったもんだの末、ゴムバンド結紮法でどうにか止血出来た・・と思う。
最初のタイトルは「二度目の正直の憩室出血止血」だった。「二度目の正直」なんて普通は使わない。結局、ありきたりの「三度目の」になってしまった。でもいい、四度目だけは勘弁やぁ〜(祈る)。

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