2023年3月10日金曜日

95歳と59歳、どっちが代理受診

午前の外来が終わろうとする頃、高齢女性が娘さんに連れられて診察室に入ってきた。しかしカルテは50歳代の男性のものだった。その男性の代理受診だという。余談だが、こんな場合、看護師らが「この人は代診で来ました」とよく言うがそれは間違った使い方だ。「代診」というのは、本来診察すべき医師が何らかの都合で出来なくなって代わりの医師が診察することを言う。だから患者さんに対しては使えない言葉なのだ。

で、その男性は引きこもりで社会と断絶して生きているそうだ。高齢の母親が面倒を見ているということだが、母親の年齢を聞いて驚いた。なんと95歳!普通は59歳の息子が95歳の母親の代理受診で処方をもらいに来るものだろうに、いやびっくり。母親はかくしゃくとしていてまあ80歳代くらいには見える。すると「こてる先生ですよね、以前急患で私が来た時にお世話になりました」という。は?全然覚えていない。で、母親のカルテを開いて見ると、6年前にめまいとふらふらするという症状で来て、検査すると完全房室ブロックで脈が36/分しかなくペースメーカーが必要な状態だった。すぐに鹿児島市の「酔う眠り病院」に紹介状を書いて送った人だった。その後、ペースメーカー装着してもらいずっとその病院に通院しているという。たまたま担当したドクターが医学部ボウリング同好会の後輩のローアープラトーDrで、私が彼の17年前の学生時代の写真をノートパソコンで見せると「ええ、あんまし変わっていませんねぇ」とのことだ。

59歳の息子はその6年前は酔う眠り病院に運転して母親を受診させていた。「その頃まではまだ外に出ることもあった」そうだ。今では、1年に1回しか風呂にも入らず髭も剃らずという状況のようだ。前に精神病院に入れられたことで母親を恨み、「毎朝、なんであそこに入れたんだ」と文句を言われているのだそう。どっちかと言えば母親に依存している状態なのに・・。母親も死ぬに死ねないといったところだろうが、元気そうでも先々長くはないだろう。

引きこもり問題は青少年だけではなく大人にもある。今後、一人でも生活出来るように、これは病院が面倒を見切れるものでなく社会が対処しなければならない問題だ。

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