2022年3月29日火曜日

たとえ宇宙医学でも

可愛いんだ理事長から70代の女性の胃カメラを依頼された。胃がぎゅ〜っと痛くなるという症状があるそうだ。しかし検査の結果は特に大したことはなかった。娘さんも付き添っていていっしょに説明をすることになった。「特に心配はない」と言うのだが、その高齢女性はいろいろと質問をしてくる。「もしや膵臓では・・」とまで気にしていた。事前に採血や腹部エコーもしていたので「膵臓?あは、大丈夫ですよ」「膵臓癌だったら・・その時は諦めて下さい、どうせダメですから」と言うと、反発されるかと思いきや「そうですよねー私もネットで・・」だと。なんだ事前にそこまで気にして調べていたんかい。

で、何が原因で胃痛を起こすかについては私もクリアに説明しきれないでいたのだが、お薬手帳を見てみてはたと気づいた。最初は鎮痛剤を飲んでいやしないかと思ったのだが、漢方がやたらとたくさん出されていた。普通の市販薬ではなくそのこクリニックの先生が調合して出していたのだ。その数10種近く。尋ねると「その漢方を飲むとよく胃の症状が出るんです」と。怪しい、その漢方怪しいぞ。漢方だから副作用がないというのは迷信だ。いや、患者さんのためにといろいろ調合して出されてはいるのだろう。しかし空腹で薬を飲めばしかもたくさんで胃はびっくりしてれん縮を起こすことは十分に考えられる。

「東洋医学だから体に優しいってわけではない。そもそも西洋医学だろうが宇宙医学だろうが・・」と言うと、後ろにいた娘さんは手を口にし吹き出しかけた。いや、笑わすつもりじゃなかったんですよ。ともかくも胃の粘膜に問題はないのだから怪しいと思ったら薬でも何でも止めてみるのがいい。相手が先生でも気を遣う必要はないとまで私は言った。医者も正直に言ってもらう方が診療しやすいのだ。

ちょっと言い過ぎたかなと思って診療を終えたが、看護師によると、内視鏡室を出たあとその高齢女性は「優しい先生で良かった」と言っていたそうだ。へーえ。自身はそれほど優しい気持ちで語ったわけではなかったからネ。ただ患者さんにとって何がいいのかを考えていただけ、だったのよ。

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