2015年11月18日水曜日

「ケンチャナヨ」

昨日からほぼ中国語しかしゃべれない中年女性を受け持っている。その息子や嫁も基本中国語だ。彼らとは片言日本語でのコミュニケーションは取れている。実は月曜当直医から引き受けた時に病棟師長のゴッタンさんから「韓国人ですけど少しは日本語はしゃべれます」と聞いたんだ。それで大まかな病状を説明し、とりあえず大丈夫だということを伝えた。しかし細かいニュアンスは伝わっていないようで、それでも「基本的に問題ない、大丈夫だ」ということを言おうと思い、これまでに韓国ドラマで散々聞いて自分でも日常会話にしょっちゅう使う言葉をおもむろに出した。

「ケンチャナヨ」

この言葉を発した後の私のイメージは確かにあった。「ああ」と声を発し「よーく分かりました。カムサハムニダー」といったものだ。
しかし、その息子夫婦はポカンとしていた。あいちゃ、出しゃばった物言いだったかなと、素知らぬ顔の日本語で「ダイジョーブ、ダイジョーブね」と言ってその場を離れた。
ナースステーションで、実は中国から13年前に来日した人たちだって早く教えてくれよー。でもゴッタン師長が一人勘違いしていただけだったそうだ。ケンチャナヨが通じるはずもない。韓国ではこの言葉は、なんでも大丈夫大丈夫で適当に済ます韓国人の特徴を表す「ケンチャナヨ精神」とか、韓ドラで5分に1回は使われるほど(こてるの印象)ポピュラーで知らない人はいないはずだった。

最初のコミュニケーションは今一だったが、その後ここの家族とはずいぶんフレンドリーに接してお互い気分よく過ごすことが出来た。それもこのところ毎週土曜日に日中合作ドラマ「大地の子」を見ているから。息子さんはこのドラマのことを知らず、教えると「ぜひDVDで見てみたい」と言っていていた。そうだ、見るべきだ。故山崎豊子の渾身の作で残留孤児の悲惨さや日中交流のありかたなど分かり名作だ。

それにしても韓ドラや日中合作ドラマが実際の診療に関係してくるのが私らしいといえば私らしいか・・。

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