2015年6月4日木曜日

「王将」と「お経」

外来に今時のネームで読みは「こはる」ちゃんという女の子が来た。例によって私は名前に反応する。漢字は今風でも読みは古風だ。そばに付いた看護師に「『こはる』といえば何といっても『王将』だよな」とつぶやくも「?」という表情だ。そうか、村田英雄の「王将」も30才代以下にとっては遠くなりにけりか。でも私の大好きな歌であり愛唱歌でそらでも歌える。だから診察室でも歌う。「小春」は2番の歌詞に出てくる将棋指しの糟糠の妻の名前だ。(モデルとなった坂田三吉の妻の実名はコユウである

「♪あの手この手の思案を胸に 破れ長屋で今年も暮れた 愚痴も言わずに女房の小春 つくる笑顔がいじらしい」

気分がいいネ!村田英雄は「女房の小春〜」のところでほんの少し笑みをたたえたような歌い方をする。逆に3番の「♪明日は東京へ出て行くからは なにがなんでも勝たねばならぬ」ではキリッとした調子で歌い分けている。ここのところは特にいいなぁ。私は関西人でないけれどいい。あなたが阪神ファンならきっと好きなはず。権威、主流への対抗意識と孤高それらが渾然一体となって胸を打つ。うっすら涙さえ出てくる。無論出だしの「♪吹けば飛ぶような将棋の駒に 賭けた命を笑わば笑え」は最高の歌い出しだ。この文句を思いついた西条八十は「これで出来たも同然」と言ったという。とにかく「王将」は詞曲歌い手すべてそろった昭和の歌謡曲の傑作なんだ。https://www.youtube.com/watch?v=Em_6pq5FbnQ

しばらくしてマシだNsとテルシー手術室長がそれぞれ別に私の診察室にやって来た。二人とも同じことを私に質問してきた。

「こてる副院長、さっきのうなり声はあれは『お経』ですか?」
「はあ?何言ってるの。『王将』だよ、村田英雄のっ!」

全くもう、二人とも50代半ば過ぎた昭和人だというのに「王将」と「お経」の区別も付かないらしい。困った奴らだぜ・・。

0 件のコメント:

コメントを投稿