2023年9月22日金曜日

下血、スピード解決

金曜の午後は約30分の感染症チームの会議があった後にまた外来業務がある。午後の外来は単に定期処方薬を希望する患者が多い中、新患の人も受け付けている。

16時過ぎに「電話で受診希望の30歳代後半の男性がいて、腹痛と下血があるそうです」と外来看護師から連絡が来た。私は今日は内視鏡担当ではないが、このケース受けざるを得ないと判断し、「急いで来るように言ってくれ。できれば16時半頃までに」と頼んだ。下血の中には急変する場合があるし、どのみち内視鏡検査は避けられないので、残り1時間ほどの業務時間内に済ませたかったのだ。

患者は16時半前には来て、さっそく問診&診察をした。で、すぐに結論。「あなたの病気は8、9割がた『虚血性大腸炎』です。採血と大腸内視鏡をすぐにして確かめましょう」と説明した。患者曰く「昨日、便秘、腹痛が生じ、1時間ほどトイレにこもって冷や汗が出るほどだった。以前もこんなことがあったが、今回は特にきつく、その後下血が出た」というもので、大腸内視鏡をする消化器内視鏡医ならばほぼ虚血性大腸炎と分かる典型的な症状だ。ただ他の施設なら「明日か来週あたり大腸内視鏡で確かめましょう」となるところが多いはず。しかし明日明後日は土日で青雲会病院では予定検査は組めない。ならば浣腸でいいからさくっと虚血性大腸炎であるかどうかを確かめたい。患者に「この腸炎はほとんどが左腹部にありほとんど下行結腸に発生します。内視鏡でそれを確かめます」と説明したが、可能ならさらに深部の横行結腸、上行結腸も見ておきたい。

検査が開始されたのが17時ちょうどごろ。ものの数分で下行結腸に粘膜発赤、びらん、縦走潰瘍と虚血性大腸炎に特徴的な内視鏡所見があった。

「全く予想通りの結果ですわ」と患者さんに言った。そして横行結腸に入れば正常所見でこれも予想どおり。ただこの部位以降糞塊がたくさん残っている。それでもさらに奥まで進めて上行結腸も糞塊をよけながら盲腸まで確認し、出血がなく可視内で腫瘍所見もないことを確認した。

検査が終わって聞けば、よく便秘をし腹痛もしょっちゅうで「ころころ便でウサギの糞のような便が出るんです」と言う。その便はまさに兎糞様便といって症状は過敏性腸症候群の便秘型の典型だ。聞くだけでも診断は付くが、内視鏡検査が終わっているので他の特殊な腸炎でないことは自信を持って言える。それでこのタイプの便秘に使われる比較的新しいタイプの下剤を処方し、腹痛時には60年以上も前から使われているブスコパン頓服を出した。いまだにこの薬に代わる腹痛薬は出ていないと言ってもいい定番薬なのにこの患者さん「初めて処方されます」だと。へーえ。

で、全て終わったのが17時30分ぴったし。初受診してから診察、検査、処方まで1時間で終わりやがった。この患者さんはほんとにラッキーだ。たまたま他の外来患者さんや内視鏡予定や救急外来患者がいなかったこと、明日明後日が土日に緊急内視鏡検査をこちら側が避けたかったことなどが相まってスピード解決となった。そして、私の急な内視鏡要請にも嫌な顔一つせず準備、補助してくれた内視鏡室スタッフにも感謝だ。ただただ有り難い。謝謝!

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