2019年10月3日木曜日

大人のイギリス、子どもの日本

ちょくちょくと録画済みのNHK、アナザーストーリーズを見ていると以前書いた。今回は
「モスクワ五輪ボイコット~幻の日本代表 涙の密室劇~」を見た。1980年のソ連のアフガニスタン侵攻を問題視したアメリカがモスクワオリンピックをボイコットすべきという呼びかけに応え、日本も同調した。

これに有力選手らが会議を開き、次々と反対表明をする。柔道の山下泰裕、レスリングの高田裕司、マラソン瀬古利彦など出場すれば金メダル確実といわれていた。世論も参加すべしという風潮だったが、日本体育協会の会長河野謙三が水面下で動き、結局は不参加を表明する。投票では不参加31対参加13だったそうだ。資金面での援助ができなくなると圧力がかかっっていたらしい。ありがちな展開だ。

しかし、少し驚くのは実は西側諸国がすべてボイコットしたわけじゃない。イギリス、フランス、イタリア、オランダ、スペイン、ベルギー、オーストラリアなど参加しているのだ。なーんだである。日本だって別に出たって何の問題もなかった。まあ日本はアメリカの属国(特に軍事面)だから仕方ない面もあるが、スポーツと政治を切り離して行動するというのは、今後似たような問題が起きた時の基本的な姿勢として我々は覚えておかねば。

というのもイギリスでは政府から様々な圧力がかかったにも関わらず選手代表の陸上のセバスチャン・コーらは屈しなかった。コーは「自粛を促されたのはスポーツだけだ。ソ連とは石油の取引も行われていたし、ボリショイサーカスもイギリスで公演していた」「ボイコットは間違った政策だ。スポーツを通して平和を訴えるというオリンピックの理念に反する」と言い、仲間とともにボイコット反対を表明した。そして「イギリスの勝利のために、僕らを助けて」とイギリスの選手たちは意見広告を出し、資金を集めたのである。泣き寝入りした日本とはえらい違いだ。そして開会式の時にはイギリス国旗でなく、オリンピックの旗を使い政府の顔を立てるという大人の対応までしている。こんなところに成熟した歴史を持つイギリスとイギリス人の奥深さを感じる。かつてマッカーサーは「日本はまだ12才の子ども」と言ったが、確かにイギリスと比べれば20年以上経過してもまだ子どもだったのだ。

結局ボイコットしたからといって何も変わらなかった。損をしたのは不参加したスポーツ選手だけ。しかし涙の抗議をして有名になった高田裕司は今では大学の監督をして、JOCの理事も務めている。「同じようなことが今もし起これば、自分は選手たちを守れる。その立場にいられる自分が幸せです。2020年に自分の教え子がメダルを取ってくれたら最高のエンディングですよね」と今度は反対を貫くつもりであった。40年も経ったんだ、そうでなくちゃ。

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