2019年10月24日木曜日

ガリガリ君さえあれば(救急車で運ばれずに済んだだろう)

深夜帯は居酒屋でお酒飲み過ぎて店を出たところで転倒し頭を打った初老女性が救急車S.で運ばれてきた。急性アルコール中毒に脳しんとう、本人ははっきりしない頭で「入院はいやー」と言っていたが、頭部CT検査後にそのまま入院してもらいやした。

そのまま何もなければそこそこに睡眠が取れたはずなのに、午前6時半頃救急が入ると連絡があった。高齢男性の口の中が痛いという訴えなんだそうだ。歯の痛みでもなく鼻血でもない、ちょっと珍しいパターンに思えたが、まあ受け入れることにした。本来は今晩の二次救急は隣町の某病院なんだが受け入れてもらえなかったそうだ。ふむふむ、病状の部位が口の中なんで専門外だからと拒否したのかな?まあいい、当院は歯科口腔外科もあるし、いざとなれば夜明けを待って口外に診てもらえばいいかと私は鷹揚に構えていた。

90才になろうかというその男性は歩いて救急外来にやって来て、いかにも口の中が痛そうにしていた。舌の下の粘膜が赤く腫れているんだとのこと。ならばと舌圧子を当てて見てみると小さく膿が溜まっているようで確かにこれは痛いだろう。そのまま圧子で押さえるとみるみる膿が出てきた。何が原因かは分からないがこうして排膿すれば少しは痛みも軽減されるはず。それに私は排膿する様子を見るのが好きで痛がる患者を尻目につい何度も押してしまっていた。まあこんなのは皮下に出来る膿や大腸憩室に出来る憩室炎も同じで排膿され出来れば自然に自分の体が治してくれる。わずか数分で痛みが少し和らぎ患者は落ち着いた。あと2時間もすれば歯科口腔外科の外来が開くのでそこまで待ってもらうことにした。

午前、その患者のことはすっかり忘れて内視鏡検査や入院患者、病棟患者の急変など対応し、午後はやや遅い帰宅となった。そしていつもように床でTV見ながら爆睡、気が付いたら周囲はすっかり暗くなっていた。

あの口の痛い患者は何だったのだろう。それを聞くのを忘れていた。翌日、山守先生に尋ねると、唾石(だせき)が化膿したものだったそうだ。そこの部位に出来る炎症としてはよくあるものなんだそうだ。そうなんか、やはり餅は餅屋だな。で、レントゲンで確認していた唾石を排石をしようとしたらすでに取れて無くなっていたとか。実は初日に排石したかったが抗血栓薬を服用の患者で1日休薬後に実施するつもりだった。山守先生曰く「結局、こてる先生の処置で終わっていたんですよ」なんだって。

いやいや、写真を見れば分かるように、アイスのガリガリ君を食べ終わった後の平べったい小さな棒でもあれば、小学生でも出来るごく簡単な処置だ。あのお年寄りも思いきってそうしておれば明け方に救急車で病院に行かなくて済んだだろう。ああ、ガリガリ君さえあれば・・。

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