2018年5月8日火曜日

告知の仕方

知り合いの初老の男性が胃カメラに来た。他医の胃カメラで胃の一部を生検したところ良性だったのだが、そこのDrが少し頭をひねって「良性だけど1年、いや半年後にまた見せてもらえないか」と言ったというのだ。それで心配になり、いわゆるセカンドオピニオンを求めて来たわけ。胃カメラの写真を見てもどこが怪しいのかよく分からず、とりあえず胃カメラを入れてみた。

観察すると、胃体中部の小弯に発赤伴う浅い陥凹がある、ここか。インジゴカルミン散布やNBI観察など駆使し、これなら私でも早期胃癌を疑うと思いつつしっかり生検をした。内心では半分以上の確率で胃癌かもと思いつつ「生検結果を待ちましょう。もし胃癌の組織が出ても開腹手術ではなく内視鏡で剥離して治療(ESD)できるレベルの所見ですよ」と説明した。患者本人も胃癌かもしれないと思ったに違いない。

こういう場合、100%胃癌と思っていても患者にはそう説明はしない。病理結果を待つ1週間ほどの期間に患者も癌であるかもと考えあぐねた末、「やっぱり癌でした」という説明を受け入れる余地ができる。これをいきなり「癌ですから手術を考えたほうがいいですよ」と言うと、受け入れどころから、驚き、不安、怒りなどの感情がまさり別の医療機関に逃げたり、最悪どこにも行かなくなったり、怪しい民間療法に走ったりすることすらある。早く治療をすれば助かることも多く、結局それらは患者のためにならない。

ま、1週間後の裁断を待とう。もし予想が外れて良性だったらどうするか。患者さんにとってはそれが一番いい。しかし、あー、やっぱり私も「半年後胃カメラを念のためしましょう」と言ってしまいそうだわー。

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