2021年2月5日金曜日

気を付けよう、お受験ストレス

ある小学生の男子なんだが、先月から時起きる腹痛が我慢できずいくつかクリニックを回って、今日は当院を受診して来た。小児科では腸炎であろうとの診断で抗生剤をふくむ処方が出されるも効果がないとのことだった。

ベッドに寝かせて腹部を診察する。ふーむ、確かに腸の動きが活発で腸けいれんによる痛みが来そうだ。過敏性腸症候群の症状とみてもよいかな。何らかのストレスがこの子にはあるのだろうか。私はふと中学受験をしているのかもと思った。触診聴診が終わってちらっとこの子の様子を見ると、すぐに母親に濡れティッシュを要求し私が触れた部位をいちいち拭きだした。ずいぶんきれい好きだなと思った。

すると母親が「去年末くらいからこうなってしまったんです。私が『床に落ちたものを取ったりするとコロナがうつるかもよ』って言ってからなんです」と。いわゆる潔癖症になっっている。「それと中学受験を去年秋から始めて、私が『みんなに追いつかないと』と発破かけて、結構きつく勉強をさせました」ということで、それは私の予想が当たった。私も中学受験をやった経験者なので分かるが、この子には相当なストレスが掛かっている気がした。触れたものをすべて消毒しないと気が済まないらしく、友人が渡してきたプリントの紙も消毒するので気味悪がられているという。私には顔の一部が小さなけいれんを起こすチック症状が出た。勉強をあまりしなくなるとそれは消えたのでやはり受験ストレスから身体症状が出ることはよくあることなのだ。

とりあえずは腹痛が治まるような内服薬を処方したが、「一度心療内科の診察を受けてみたほうがいい」とアドバイスした。帰りがけ、その少年はドアノブを触った手をやはり消毒して帰っていった。それに1月は学校に数日しか行けなかったそうだ。うーむ、私にはこの症状を治す自信はない。専門の先生に診てもらったほうがいいだろう。中学受験は今では誰でもやるくらい普通になっている。しかし過熱するあまり、子どものメンタルがやられたり、進学してからの勉学へのやる気を削ぐようなさせ方は問題があると思う。

私が小学高学年の頃、隣の小学校に勉強出来るM君という生意気だが勉強の出来る子がいた。模擬テストが終わったあとの講習をいっしょに受けたりし、その際、イマイチ勉強の出来ない私はちょっぴりからかわれたり頭を小突かれたりしたことがあった。勉強も出来る上に体格も良くて私は反抗できなかった。結局、M君は希望中学に受かり、私は落ちた。時は過ぎ、私が鹿大医学部生も高学年になった頃、M君と同じ進学校出身で私のクラスメートのこっさま君が彼のことを話題にした。驚いたことにM君は別の地方医大に進学したがなんと自殺したという。驚いて私は口をあんぐりさせた。「(M君は)プライド高いやつだったからよほどのことがあったんだろうな」とこっさま君は言っていたが、いったいなぜ?と今でも疑問だ。受験ストレスが遠因として考えられないだろうか。

おかしい症状が出始めたら早めに親は対処し、場合によっては受験を諦めさせるくらいのことが必要だろう。不登校だけならまだしも自殺なんかされたら元も子もない。

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