2020年8月28日金曜日

「この病気の有名人は誰?」

 夕方近くになってのネット情報で「安倍首相辞任の意向」とあった。数日前に本日夕方に会見を行うと報道があって何か普通ではないなと思っていた。10日ほど前の慶応大病院への検査受診もマスコミの扱いが普段とは違い首相の健康不安説が流れていたのでもしやと思っていたら本当だったんだ。その会見は見るヒマがなかったが、以前からの持病の潰瘍性大腸炎が悪化して辞任をするとのことだ。それは私にとってちょっと残念なことだった。

というのも、私が行う診療で安倍さんをかなり使わせてもらっていたんだ。潰瘍性大腸炎の患者さん、特に初めてそう診断された人にそんなに心配しないでという意味で「この病気の有名人がいますが誰だか分かりますか」とよく質問していた。しかし「安倍総理ですか」と答えた人はいなかった。第一次安倍内閣を辞任したときにこの病気のせいもあったと報じられていたから知られているかと思ったら一般の人にはそうではなかった。そこで私は「この病気になっても一国の総理大臣を何年も勤め上げられるんです」と励ましていた。難病指定で完治しづらい病気であっても実際には軽症で過ごす人が多く、最近はあまりの患者増加ぶり(難病指定の中では一番多い)に直腸が侵される程度の病態では申請しても認められなくなっている。つい最近も動揺していた患者にこの話をし、病気に対し前向きに対処していくことで納得してもらっていた。

こうした有名人のモデルケースは患者さんには結構効果があるんだ。長らく青雲会病院の非常勤をしてもらっていた循環器内科の田原坂Drは「長嶋さんにはずいぶんお世話になったー」と語っていた。どういうことかというと、血栓が脳の血管に飛んで脳梗塞を起こした長嶋茂雄さんを例に出し「だからそれを防ぐには抗血栓薬を飲んだ方がいいんです」と言うとほとんどの患者が素直に応じてくれたそうだ。治療効果がどうのエビデンスがどうのと説明するよりずっと効果的だったと述懐していた。私も潰瘍性大腸炎が難病指定だと説明すると不安がる人が多いので必ず安倍さんを例に出していたのだが・・。

これからは患者さんに本日のタイトルのような質問はしにくくなった。しかし安倍さんには病状悪化をまた克服してこの病気で苦しんでいる人たちに勇気と安心を与えられるよう願う。お疲れ様でした。

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