2016年6月21日火曜日

ため息・・アルコール依存症

アルコール依存で肝機能が悪化し腹水が溜まった中年女性を外来で診た。顔を見るとげっそりし色が悪く身体はもちろん痩せている。利尿剤での治療が必要で入院を勧めたがイヤだと言う。「まだアルコールが飲みたいから?」「いえ、今は飲んでいません」とのことだが、アルコールも飲めないほど体調が悪くなっただけなのだ。採血やCTでの肝臓の様子からアルコールさえ止められればこの人は普通に生きていけると判断できる。しかしそのアルコールを止めるというのが大変に難しい。依存症の人に目の前に依存物があればどうしても手が出てしまう。アルコールは世に氾濫している。手を出すのは簡単なのだ。

私は患者に言う。「このままだとあと生きられるのは5年か10年か。これまで40代で死んだアルコール依存患者を何人も見てきた私がいうから間違いない。アルコールさえ止められれば普通に生きていける」とまず脅し気味に説明する。それだけではだめで内服も出す。この患者は数日前に診療して少し体調が上向きで私の指導を守ろうという気になっているのでもしかしたら入院でなく外来でもやっていけるかもしれない。だが、家族が付き添っておらず来院したのが一人というのがなあ。依存症は一人ではなかなかに治療困難で周囲のサポートが必要なんだ。人は自分さえよければというときにはすぐ挫折するが、他人のためにという気持ちがあると頑張れる生き物で、周囲が自分のこと心配して何かしかやってくれるとそのためにもアルコールを断たねばと思う。

でも・・それでも上手くいかないことが多い。周囲もやがて呆れ、諦観するようになる。家族の枠を越え自助会のようなグループに参加しみんなと頑張る姿勢があれば・・それで上手くいくこともあろう。要するにアルコール依存症は並みの病気なんかよずっと治療が難しいってことを言いたい。この人も立ち直ってくれればと本当に思うのだが、今の自分に出来るのは外来で話しを聞き、支えていくくらいしかできない。ため息が出る。

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