2024年8月26日月曜日

診断に迷ったらCT依頼を迷うな

今日はこの前話題にした放射線直腸炎出血の治療と胃瘻造設、総胆管癌の胆管金属ステント留置と内視鏡治療三昧だった。内視鏡も大腸内視鏡、胃カメラ、ERCP用とそれぞれ違うものを使用した。内視鏡医も今は治療がメインで、観察、診断だけではやっていけないってことだ。

サンキュー病院から患者情報のFaxが届いていた。4、5日前に私が気胸と診断した若い男性が退院したという知らせだ。そうか、よかった。彼は2週間ほど前に胸の痛みがあったが他医で調べて特に問題なしとのことだった。その後、飛行機に乗ったら息が苦しくて大変だった。そこで搭乗翌日に青雲会病院を受診したのだ。酸素濃度を測ると99%から95%と変動が大きい。過換気症候群が若い人には多いが一般には女性が多く心理的な問題を抱えていることが多い。聴診すると左側の呼吸音があまり聞こえない。何か変だ。本人も何かしら異変を感じていて「CTを撮ってもらえたら」と言う。こちらもCT撮影に同意してくれると有り難い。ただの診察や胸部レントゲンだけだと病気を見逃す可能性があるがCTだとかなり精度が高くなる。まあ20代なら癌は考えられず、肺炎、結核くらいか。

そんなふうにぼうと考えていたところ、出来上がったCT画像を見て「ああ、そうだよなぁ」とすぐに合点した。気胸ならば問診から聴診の結果がすべて説明出来るのである。若い痩せた男性に発症することが多く、胸の痛みと呼吸困難を訴える。飛行機搭乗は禁忌で気圧の関係で胸腔内に漏れ出た空気が増えて呼吸障害を起こしやすくなる。他医でのレントゲン写真を再確認したが発症早期で気胸の所見は出ていなかった。しかし飛行機搭乗で悪化し胸部CTでは一目瞭然だった。↓左(向かって右)の肺がしぼんで周囲に空気が漏れているのが分かる。画像では真っ黒で肺野や血管が全くなく空気そのものが写っている。けっこう重症だ。
左の胸に胸腔ドレナージ(胸にチューブを挿入して肺から漏れ出た空気を脱気させる手技)を行う必要があり、姶良市内ならば呼吸器専門医が多くいる国立のサンキュー病院に依頼することが多い。今回もすぐに引き受けてくれ入院後1週間もしないうちに退院となったようだ。いやー、よかったよかった。

診断に迷った時、CTは本当に頼りになる。青雲会病院ではかなり気楽に依頼できるのが有り難い。昔(30年くらい前になるが)大学病院では依頼書を書いてCT検査が出来るまで何日もかかることがザラだった。全科から放射線科へ依頼集中するからということもあるのだろうが、あまりも遅くて、よほど診断までに余裕のある患者しか頼めなかった。そこで当時の第二内科は大学の近くの放射線科医のいる関連病院に依頼していた。院外で調べてもその日のうちに検査できるから大学病院院内で検査するよりずっと早くて便利だったのだ。

青雲会病院に来て入職前と比べCT撮影依頼に全く躊躇がなくなったのは、私にとって一番違う医療態度かもしれない。

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