2021年4月27日火曜日

この画像で癌が分かるか?

人間ドックの胃カメラに40代の男性が来た。カルテを見ておや?と思った。去年、早期胃癌で内視鏡切除を受けたとあったからだ。さっそく去年のドックでの胃カメラ所見を見てみて思わず唸った。

「うわ・・これを胃癌とは診断しきれないな」

普通、胃癌になる人は95%くらいがピロリ菌感染者でその場合胃の粘膜は萎縮性胃炎といって特徴的な所見をいくつも示す。この人にはそれはなくピロリ菌非感染者で、しかも胃癌を指摘された粘膜はわずかに白色調なだけで陥凹も隆起もなく平坦だった。専門用語でいうⅡbタイプの早期胃癌で非常に数が少ない。↓がその所見だ。どこが病変か分かるかな?
少しヒントを与えたので消化器専門Drなら分かった人はいるだろう。↓青丸の部分だ。
結果を知っていて見ても、正直、私は癌を疑うかすら自信が持てない。ここを怪しいと思って生検を実施したことで癌が判明した。しかも低分化型のややたちの悪いタイプの癌だった。見つけたのはピッピDrである。カルテ記載を読むと「前庭部に小さな白色調の粘膜を認めました。念のため生検まで施行しました」とある。病名も癌の表記はなく単に「白色調の胃粘膜」とだけ書いてあった。結果を知ってびっくりし、患者を呼び、癌告知を行い「もしかしたら内視鏡切除が出来るかも」と他の病院を紹介したのだった。治療はうまく行き、そこの病院ですでに半年ごとの定期フォローアップも受けていた。

胃カメラが終わり、私はその患者さんに「(癌を見つけた)ピッピ先生に感謝ですね」と言うと「ええ」うなずいていた。周りのスタッフも微笑んでいた。だが、患者さんはきっと知らないはず。ピッピDrがその約4ヶ月後に急逝してしまったことを。

生きているうちにどれだけ多くの人を助けられたか。医者は死んでも生き残った患者さんによって救われていると思うのである。

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