2021年4月3日土曜日

3年越しの大腸憩室止血

ついこの間、「春は血まみれの季節だった〜」と書いた。それは4月の3日の今日も続いていた。

まずは下血の患者が来ているとあり、それが昨日、近隣のクリニックで大腸ポリープ切除を受けてからずっと下血しっぱなしだというんだ。不幸にもそこのクリニックは今日は担当医が不在で「いざというときは青雲会病院へ」と言われていたとか。ふむ、下血なら当然うちだろう。

外来の空きを待って大腸内視鏡をした。見れば奥の横行結腸のポリープ切除部位からじわじわ出血があった。クリップで止血予防するも不十分だったようだ。ついこの間うちの病院でも全く同じ原因の下血があったし、あの時はゴム結紮で治療したがが今回はクリップの追加止血で大丈夫だった。ポリペクトミー後の下血って年に1回あるかないかなのに同じ週に2回も経験するなんてやはり「血まみれの季節」やー。

で、それだけではなかった。大腸憩室出血で入院している私の患者がまた下血をしているという。うーまたか。仕事が終わる12時過ぎから時間外にかけて大腸内視鏡を行った。この患者は3年前に憩室出血で入院、半年前にも入院したが、はっきり出血源を突き止められずにいた。今回も入院当日とその翌日に大腸内視鏡をしていたが出血源は見つからなかった。それでも下血があるならば諦めることなくまた大腸内視鏡だ。

盲腸まで見てゆっくりと腸管内を観察し、肝弯曲を過ぎた直後だった。左側の憩室内部を見た瞬間「あったーっ!」。明らかな出血源の露出血管が見えたのだ。いや、正直うれしかったヨ。憩室出血は出血源を見つけるかどうかでほぼ勝負が決まる。「勝ったー!」と書きたいくらいだったがそこは抑えてカルテに記載した。後でこれを読んだ内視鏡室スタッフ2人それぞれが、私に「先生が喜んだ顔が浮かんだ」と言っていた。
クリップでまず露出血管をはさみこみ、これだけでも止血できるが、外れる可能性もあり、私は結紮ゴムで憩室ごと縛り上げ壊死させ完璧に止血させる(Endoscopic Band Ligation)。すぐれた止血法なんだが鹿児島県では私以外にやっている人がいないようだ。スコープを入れ替える作業が多少面倒なのと粘膜壊死をさせることへの不安があるのかな。でも私は7、8年年前の学会の発表を聴いてそれは心配ないと分かっている。今回もしっかり絞扼壊死させることが出来た。3年越しの思いが叶ったわ。
↓発見直後の画像。わずか1mm大の露出血管が見えた。
今は止まっているが破れると一気に出血源が分からなくなる。クリップ↓を近づけている。
血管をクリップで挟み込む↓。
憩室をクリップごとゴムの中心に持って来る↓。
憩室を吸引し根元ごとゴムで縛り上げる↓。
憩室の頂点。クリップは血管をくわえている。この後壊死し数日後ゴムは脱落する。
大腸憩室止血を行うには技術もだが何より絶対に出血源を見つけるんだという根性が何より大事だ。今回の下血事案でその思いをより強くしたわ。

0 件のコメント:

コメントを投稿