2022年5月23日月曜日

縁のある患者さん

まだ二十歳前の女性が下血で外来に来た。父親も付き添っていた。症状をじっくり聞いていると、これは典型的な虚血性大腸炎だろうと推測がついた。最初に排便困難があって腹痛が生じる、その後ようやく排便があったかと思えば下痢気味の便でそのうち血便が出てくる。それでびっくりして受診するというパターンだ。ただ中高年の女性に多い病気で10代の患者は珍しい。しかしこれまで20代でも発症して来たケースを経験しているので10代でも起こりうるはずだ。幸い血便も多量ではなく診察時の症状は落ち着いていた。

そこまで説明し、「あなたの場合、大腸内視鏡をすればおそらく下行結腸に粘膜の出血痕や発赤がわずかにある程度でS状結腸や奥の横行結腸には異常ないことが確認できるはず」と内視鏡検査を勧めた。問診と症状からそう推測したわけだが、本当にそうかというのはやはり論より証拠、内視鏡検査が一番だ。しかも本格的な下剤の前処置は不要で、「浣腸のみでだいたい分かりますよ」と本人、父親に説明し、承諾を得た。

で、結果だが、診察時に私が推測したまんま、全く相違なかった。我ながら驚いた。でもこの虚血性大腸炎という病気、毎月数人はいるし消化器内科ではありふれた疾患だから当然か。で、治療だが、この程度なら何もしなくてよい。もっと彼女が高齢患者なら大腸癌が併発している可能性もあるので後日ちゃんと全大腸内視鏡をする必要がある。しかし10代では99.9%その心配はないだろう。それよりも浣腸してでも今日検査する必要があった。この虚血性大腸炎、この程度の粘膜障害なら数日で所見が消えてしまうからだ。1週間後に大腸内視鏡なんて言っていたら粘膜が正常化してしまい、「何の下血だったんでしょう」となる。

ともかくも本人、父親とも安心して内視鏡室を出て行った。で、私もカルテをパラパラと見ていると・・なんとその19歳の彼女、11年前にも当院受診していてその時の担当が私だった。8歳の時、友人に石を投げられ頭が出血、血腫が出来て受診していた。そんなケースはまず外科か脳外科のDrが診るはずなのに、たぶん私が救急当番か日当直だったのだろう。へーえ、たった2回しかこの病院を受診しておらず、10年以上のブランクののち、いずれも私が診たとは。すでに部屋を出ていたのだが、秋の萩君に「このことを伝えてといてー」と頼んだ。すると「先生、頭の怪我のことを覚えていましたよ。少し驚いていました」そうだ。

なにかと縁のある患者さんているもんだね。

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