2021年6月16日水曜日

救急車に乗った

何年ぶりだろうか、救急車に乗った。

その患者はまだ50代男性で「朝、急に胸痛と背部痛があった」と来院していた。かなりきつそうとの情報が看護師から寄せられたので、診察前に心電図と胸部CTを急いだ。心電図を見ると特におかしい波形はない。そうなると胸部CTでは・・。放射線科の空中技師から「大動脈解離らしい」との連絡があった。単純CTでは一見分かりにくいがその目で見れば大血管の1/3ほどが解離しているように見える。すぐに造影CTを指示すると間違いなく胸部大動脈解離だった。しかもスタンフォードA型という上行大動脈から解離があり手術が必要なタイプだった。

血圧を下げるよう降圧剤の注射をしつつ搬送先を探した。幸いすぐに鹿児島市内の天妖怪病院が受け入れをしてくれた。ただこのケースはいつ急変するかの懸念があり看護師を付けるだけではやや心配だ。そこで担当した私も乗ることになった。患者さんには鎮痛剤の注射も打ち、痛みは最初が10とすれば2か3ぐらいにはなっていて少し落ち着きも取り戻していた。しかし奥さんはあまりの急なことに動揺を隠しきれないでいてとても自分の車で鹿児島まで行けそうになくいっしょに救急車に乗ってもらうことにした。同乗した仏顔Nsも「先生がいるだけでとっても心強かったです」と言ってくれた。それだけで乗った甲斐があったかな。以前の救急車に比べ乗り心地はまずまず改善されていた。それでもゴトンゴトンと揺れ、血圧や脈拍をチェックしつつだったので若干の車酔いに近い気分にはなった。
30分弱で天妖怪病院に着くと、「すぐにICUに」ということで7階病棟まで運んでいった。うーん、さすが救急患者に慣れているだけあって看護師さんなどテキパキとしていたねえ。なかでも体格のいい男性医師が「ゆっくりと降ろしてー」とか「心エコーも準備して」などと言い足背の動脈にマジックで印(しるし)を付けるなど中心になってみんなを動かしていた。「後をよろしくお願いします」と言い、ICUを離れ、下に降りるためにエレベーターを待った。

と、そこに職員の顔写真付きのパネルが掛けられていたのを見ると・・「え?!」さっきの医師かと思われた男性は看護師だった。いやはやびっくり。落ち着いて指示を出している様子からてっきり心臓血管外科のDrかと思ったヨ。帰り際、姶良の救急隊員と顔見知りのようで親しげに話している様子がちょっぴりDrらしくないなとは思ったが・・。

帰りはスピードも上げず周囲の車を追い抜くこともなく病院に帰り着いた。でもやっぱり車酔いが少し残ってしばらくは休みを取らざる得なかったのであった。

0 件のコメント:

コメントを投稿