2024年11月6日水曜日

わざと出血させて憩室出血を止める

さて、昨日のタクミDrの大腸憩室出血患者だが、今朝も新鮮下血があったというから「絶対出血源見つけたる」と意気込んだ。そもそも今日は内視鏡担当ではないけれど、夕方の外来を止めて検査に向かった。S状結腸から出血しているのは分かっている。2、30個もあるS状結腸憩室の中から出血源の露出血管を探した。送水を繰り返し憩室の奥に血管がないか探すんだ。

そんな中、チラッと見えたわずかに色調の違う粘膜部分があった。「おや?」とスコープを近づけてみる。↓大きさは1mmもない0.5mm程度のわずかに赤と白の所見だ。写真を見てもほとんどの人はどこが出血源か分からないだろう。
かなり分かりづらいので送水して鉗子で押さえ、拡大して観察する。どこが出血源か?
目印を付けて露出血管を示す。ピンク丸がそれだ↓。その目で見ないとまず見過ごす。
憩室の出血源たる露出血管にはいろいろなパターン、形があり、上の写真のようなものはやや少なく、もっとはっきりした形の血管のことが多い。この場合、本当に出血源かを確かめる必要があると思い、出血させてもいいやぐらいの気持ちでこの後鉗子で突いた。すると・・。
ウヒャー!やっぱり出てきよった。出血源間違いなし。私はわざと出血させたのである。最初の写真だけでは専門のドクターでも「本当に出血源か?」と確信が持てない人はいっぱいいるはず。しかしこの写真を見れば出血源と納得出来る。私は出血は怖れない。むしろ「やった!」と喜ぶくらいなんだ。実はこの前の学会で憩室出血を発表していた先生が、動画を出して私と同じように鉗子で突いて探っているのを見て意を強くした。出血憩室にマークリップを掛け、その後結紮ゴムで吸引結紮(EBLという)をして止血しいっちょ上がりだ。
止血出来上がり図は小さな果実が腸管に出来たようになる。
数日以内に絞扼された腸管粘膜は壊死してゴムもクリップも外れる。その後潰瘍化した粘膜はやがて瘢痕化し憩室もろとも消失する。

先月から続いた憩室出血は出血源止血2勝2敗だった。これでも全国平均(止血率2〜3割)よりは高い。わざと出血させて出血源を確定するというのは私がちょくちょくやる憩室止血法の一つだ。多くの先生方が「憩室の出血源はどうせ見つけられない。何もしなくても自然止血率が7割くらいあるからそれでよい」と傍観気味なのはどうなんかねぇ。いったん止まって退院してもまた再発してやって来る患者が多いから私は出来るだけ粘って止血に力を注ぐ。この10年、憩室出血の止血法に血道を上げ、今日みたいにうまく行くとまたやる気も出てくる。もうライフワークやっ!

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