夕方、カールが隣のそろばん塾に通っている小学生の女の子から話しかけられた。
「おばさん(カールのこと)、ここにいた白と黒の模様のネコはどうなったか知りませんかぁ」
その子の顔を見てカールは思い出した。まだハナビが庭のロッジで毎日エサもらいに来ていてそこを根城にしていたころ、その子が「可愛い〜」と言って来たことがあった。その頃も今でもそうだが、そろばん塾の子らはハッピーやキタロー、クロちゃんなど外ネコをうちが飼っていると思っているのだ。そこでカールが「いや、うちのネコじゃないのよー。毎日エサ食べに来ているから勘違いされてもしようがないけどね。もし良かったら飼わない?」というやり取りがあった。「お母さんが許してくれたらどう?」なんて言っていたのが2年前の夏頃で、結局9月になってハナビをうちで飼うことにしたのだった。
その子が「毎日いたのにいなくなってしまってー」と言うのだ。カールはその子とのやり取りも覚えていたので「まあ、あのネコね、うちのネコになって名前も『ハナビ』って付けたの。いるから見るぅ?」というと「ああ、良かったぁ。見たーい」と乗ってきた。なんと1年半くらいもずっと気に掛けてくれていたのだ。そばにいっしょにいた女の子は「え、私はいい」と遠慮した。カールに言わせれば「人の家にはむやみに入らないと教育されているのでしょうね」ということだ。
で、ハナビ好きの女の子が玄関に入って来て、カールが2階に向かって名前を呼ぶとトコトコとハナビが降りてきた。そして「わぁ可愛い〜」と言って女の子は抱っこし始めたのだ。カールはもしや引っ掻かれないかと心配したが、そんなことはなく素直にハナビは抱かれたのだ。へーえとカールは感心して、また「良かったら飼わない?」と言った。むろん即答出来る話ではなく、よしよしと言って女の子も満足して帰って行ったという。
私が帰宅し、以上の話題を矢継ぎ早に聞かされた。で、カールがすこし顔を曇らせて語ったのが、「それからハナビが2階から降りてこないのよー」「ほう」「いつもはテル君が帰ってきたらすぐに1階に降りてくるのに」「そうだな」「ネコも分かっているのよ、私が見捨てるようなことを言ったのをハナビも分かったんだわ」「ううむ」カールもちょっと可哀想なことを言ってしまったとちょっぴり後悔したのだった。
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