2018年4月28日土曜日

鹿児島県民の名字

土曜午前の外来、「東麻生原(ひがしあそうばら)」という中年男性が来た。診察が終わり、「長い名字ですね」と話題にした。鹿児島の中部にある名字で一つの姓に「東」「麻生」「生原」「麻原」「東原」などいくつも名字に使われる漢字が入っている。これだけ長いと名前はたいてい一文字にしたくなりその人も一文字だった。「うちの女房は3文字だから長たらしくなって」「昔、銀行で仮名で書き入れる時、濁点も入れて10文字あって入りきれないケースがよくあった。途中で切れるんで受け付けつてもらえず困りましたヨ」など長すぎる名字には苦労もあるとか。

鹿児島県は他県よりはるかに4文字名字が多く多い順に「上加世田」「井手之上」「上久木田」「上中別府」「内大久保」「下松八重」「中小野田」など上中下が含まれる名字が多い。全国的には「勅使河原(てしがわら)」が1位で字が違うだけの「勅使川原」が2位、ついで「小比類巻(こひるいまき)」が3位だ。私の患者には「下松八重(しもまつばえ)」さんがいるし同級生には「上加世田(かみかせだ)」と「内大久保」がいたし、囲碁プロには「中小野田智己」九段がいる。意外に目にするものだ。ただ、東麻生原は6万893位、全国に20人ほどしかいないレア名字だった。

ちなみに鹿児島で一番多い名字は「中村」、2位は「山下」3位は「田中」である。中村は全国では8位の名字だが県で1位になったのは鹿児島だけどいうことだ。他に特徴的なのは「中薗」「下薗」「大薗」「神薗」「内薗」「堂薗」など「薗」が付く名字(もちろん普通の「園」も多い)や「松本」「坂本」「福本」が「松元」「坂元」「福元」など「元」になるケースが多いこと、「重留」「福留」「増留」など「留」が付いたり、「大迫」「迫田」「中迫」など「迫」が付いたりが多く、全国ベスト3の「佐藤」「鈴木」「高橋」がベスト30にも入らないことなど沖縄についで日本全国の中でも特殊な名字ランキングとなっているそうだ。日本の端に当たり人的交流が少なかったせいがあるんだろうか。

その中の「元」についてはNHKの「日本人のおなまえっ!」で浄土真宗が弾圧されていた藩政時代、本願寺の本の字を避けることでうちは真宗じゃないことを示したという説が有力らしい。なーるほどだ。ちなみに坂本龍馬が薩摩に来た時、薩摩側の文書には「坂元」と書かれたりしている。さらにお隣の熊本になると「元」は使われずほとんどが「本」になる。県名からして「熊本」だしー。なお、鹿児島では「熊本」さんは極端に少なく「隈元」ならいる。「元」が多いの法則は徹底しているね。

かくも名字だけで話題のネタはいくらでもあるのだった。

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