大晦日の日当直は確か5年ぶりだ。今回の当直は以前と比べればまださほど忙しくはなく、午前は入院患者もあったり外来もそこそこ来たが、午後にはやや落ち着いた。コロナでの受診控えの影響はまだあるようだ。
午後は当直室でTVを付けると、NHKBSで「ローマの休日」をやっていた。すでにアン王女は宮殿を抜け出しグレゴリー・ペック扮する新聞記者と行動を共にしていた。この作品、もう何度も見ていてストーリーも分かっていてるのに、結局最後まで見てしまい、結構感動したのには呆れるくらいだった。名作だわ、やっぱり。一つ一つのシーン、シークエンスにむだがないねえ。そしてオードリー・ヘップバーンの演技もただ可愛い、綺麗なだけでなく王女の気品と苦しさ、心に秘めた感情といったものをよく表現していた。ほぼ新人でありながらアカデミー主演女優賞を取ったのも肯けるところだ。
撮影されたのは1952年(昭和27年)で公開が翌1953年。ローマでのオールロケで撮影はかなり大変だったそうだ(騒音対策、交通整理、パパラッチ問題に悩まされて、移動のたびに見物するファンの群れにも対応せざるを得ず、暑い夏で大変な作業を要したという)。監督のウィリアム・ワイラーはハリウッド全盛期の大監督でアカデミー監督賞を3度も受賞しているが、この「ローマの休日」では受賞してはいない(ただし製作者として作品賞は受賞)ものの、彼の力も大きかったと思われる。彼の作品に出演し主演賞を取った俳優女優がたくさんいるし、監督賞ノミネートが12回というのは今後も破られることはないかもしれないほどの記録だ。この作品には彼自身もかなり満足はしていたが「唯一、予算の関係でテクニカラーにしなかったのが悔やまれる」と述懐したそうだが、白黒フィルムでも何の遜色もないほど魅力的な映画だと思う。↓ウィリアム・ワイラー。
彼はユダヤ系ドイツ人であり、アメリカで起きた赤狩り旋風にも抵抗したという。そもそもこの「ローマの休日」は赤狩りで追放された脚本家ダルトン・トランボの原案で公開当時は別の脚本家の名前で出ていた。彼はハリウッドを追放された後も偽名で作品を作り続けていた。後、ハリウッドとは和解し、私が中学生の頃観たスティーブ・マックイーン&ダスティン・ホフマンの「パピヨン」、ケネディ暗殺を取り上げた「ダラスの熱い日」、観には行かなかったが「ジョニーは戦場へ行った」も彼の脚本だったんだ。1976年没だから亡くなる直前まで話題作を作っていたことになる。
2015年には「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」というタイトルで彼の映画界での生き様が映画にもなっている。ラブロマンスとして名高い「ローマの休日」だが、調べれば調べるほどそれだけには収まらないエピソードに彩られた名作であると言わざるを得ない。大晦日は名作、大作映画がTVで放映されるしまたよく観てもいる。以前も「ゴッドファーザー」や「生きる」を取り上げたりもした。40年くらい前かな、「サウンドオブミュージック」も初めて観て感動したこともあった。「大晦日は名作映画を」が今後も続きそうだ。