9月も下旬になり彼岸も来ているというのにまだ暑い。「暑さ寒さも彼岸まで」はよく当てはまる言い伝えだと思ってきたがそれもいよいよズレてきたか。その証拠に今年は彼岸花をあまり見ない。姶良の高速を降りてから病院までの道沿いの田んぼや畑の周囲に咲く彼岸花が例年は9月15日ごろはすでに咲いているのに今年はまだ見ない。温暖化進む中、この夏の暑さが影響しているのではないか。
カールが8月にNHKEテレで見たという「ヒトラーの子どもたち」というドキュメンタリーを録画で見た。何かすごい内容だったというのでタイムシフトから録画保存しておいたのだ。私はそのタイトルからしてナチスの思想教育に染まった(染まらされた)ドイツ青少年の話だろうくらいに思っていてすぐには見るに気になれなかった。で、余分録画を消す作業中、一応この録画も見てから消そうと思って出だしの数分を見たのだが、衝撃的な映像に驚きそのまま見入ってしまった。↓。
なんなんだこの映像は。まるで人間の赤ちゃんがイヌかブタの子どものように多数寝かせられ扱われている。ある施設の様子だが何の施設かは以下の字幕を見れば分かる。
民族的に純粋で健康と分類されたアーリア人の子供の出生率を高めるために「レーベンスボルン」はドイツに10ヶ所、その周辺国に18ヶ所ほど作られ、フランスには1ヶ所作られた。しかしフランスの施設はどこにあったか長らく不明で30年以上経過して判明し、今回のドキュメンタリーでそこの子どもと判明した人物を取材、証言を元に番組が構成されていた。ナチスはドイツ人ナチ党員男性と若く健康な女性とに性交渉を奨励し、女性は妊娠すると出産6週間前になるとレーベンスボルンに入所し出産後6週間をそこで過ごさせるものだった。その子どもたちはやがてアーリア人が世界を支配した際には優秀人種としてその役割を担い、劣等人種とされたユダヤ、ロシア人などは奴隷として扱われるという思想のもとに多数作られていた。ユダヤ人のホロコーストはこの施設は真逆のものだったわけだ。
番組では触れられなかったが、特にノルウェーでは10ヶ所ほどもレーベンスボルンが作られた。ヒトラーがノルウェー人などの北方人種をより純粋なアーリア人とみなしドイツ人のアーリア化を推進するためだったそうだ。そこで出生した子どもは約8000人おり、その他の施設で出生した約4000人と合わせ、約12000人の子どもが駐留ドイツ兵とノルウェー人女性との間に生まれたとされ、ドイツ降伏後に当時のノルウェー政府が「対敵協力者」の処分を決定し、上述のノルウェー人女性約14000人は逮捕され、そのうち約5000人が18か月間強制収容所に入れられた。ドイツ兵と結婚した女性についてはノルウェー国籍を剥奪され、出生した子供には極めて政略的な「知能鑑定」が行われ、子供たちの半数は「知的障害の可能性が高い」との恣意的診断を受けた。子どもたちには何の罪もないのに戦後ノルウェー政府によって公式に迫害まで受けたのだ。後に人権侵害と指摘を受けノルウェー政府が謝罪し補償をしたのはかなり遅く2002年のことだった。
ちなみにABBAのフリーダ・リングスタッドも実はドイツ人ナチ党員の父とノルウェー人の母の間に生まれた子で、彼女はノルウェーでナチス・ドイツ崩壊直後に生まれたが、ナチ残党への追及を避けるため母と共にスウェーデンへ逃れ、そこで成長したため知的障害者施設への収容は免れた。彼女もまた、実の父が存命中にもかかわらず、父は死んだものと聞かされて育てられていた。
人種主義、優生思想の恐ろしさがよく分かるドキュメンタリーだった。今後このような思想を振りかざす政治家が現れたなら要注意だ。ヒトラーは曲がりなりにも選挙でドイツ人が選んだ独裁者だ。人類の知恵として二度とこんな悲劇を繰り返さないようにしなければ。
番組を見たカールだが、最初の映像を見た時の感想は私とは少し違っていた。「まあ、ヒトラーってこんなにもたくさんの子どもを生ませたの?すごい・・(絶倫)」
こらっ!いくらタイトルが「ヒトラーの子どもたち」だからって額面通り受け取るんじゃない、まったく。