昨日は夕方から病院の当直でした。日によっては寝当直と呼ばれるものもありますが、今夜はそれはありませんでした。
まず、外来で脱水を起こしたサッカー少女と、同じく脱水から体調不良を起こし、過換気症候群になった中年男性の治療を指示しました。また、病棟では呼吸困難になった高齢女性など、まあまあ忙しい一日でした。
しかし、21時過ぎに救急車で運ばれてきた60代の男性患者には少し慌てました。救急隊が到着直後に心停止していたのです。私たちはすぐに心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行い、気管挿管と点滴ライン確保をし、心肺蘇生を行いました。彼は末期のがん患者で、近々大学病院に入院する予定だという情報はありましたが、詳細は分かりませんでした。救急隊は大学病院に連絡しましたが、病状から近隣の医療施設で即座に治療を開始する方が良いと判断され、やんわりと断られました。とにかく、目の前の患者を救命しなければなりませんでした。
何度かの強心剤注射で心拍が戻りました。しかし、危険な脈拍異常であるVT(心室頻拍)が現れたため、電気ショックも行いました。VTは治まりましたが、心拍が再び停止しました。その後、心拍が再開し、今度は正常なリズムになり、何とか彼を病棟に運び、入院加療に移行することができました。ただし、いつ再び心停止するかは分かりませんでした。この患者さんは体調不良ではありましたが、独身で認知症を患っている母と同居していました。心配した姉が関東から見舞いに来ており、彼女に「心拍は戻りましたが、今夜中にまた心臓が停止する可能性が高い危険な状態です」と説明し、彼女に付き添ってもらいました。
その間に、この患者さんが泌尿器系の癌で腹部全体に浸潤し、癌の悪液質という状態にあることが分かりました。そこで、家族であるお姉さんと話し合い、今度心臓が停止した場合には胸骨圧迫を行わずに静かに看取ることを提案しました。お姉さんは「それでいいです」と応じました。そして、今日の午前1時20分、私は死亡を宣告しました。「ありがとうございます」とお姉さんは言って頭を下げました。病院に行きたがらない弟さんでしたが、「自分はどうなってもいいから病院には行かない」という頑固な面もあったようです。
もしもっと早く医療機関を受診していれば、このような苦しみを経ずに亡くなることもなかったかもしれません。ただ、誰にも知られずに孤独な死を迎えるよりも、身内の人に看取られることができたことは良かったと思います。そう感じた当直の夜でした。
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