甲子園の第4試合、早稲田実業対大社は名試合だった。勝利監督インタビューでも監督、インタビューアー両者が思わず泣きそうになっていたもん。
島根代表大社高校のゲームについては1回戦で優勝候補の報徳学園戦を8月11日のこてる日記ネタにしていた。その試合を見て「いっしょになって喜び、大社の応援団の輪の中に加わりたいくらいだった」と書いたように、このチームに興味が出てその後2回戦の長崎・創成館戦も観戦していた。終盤に2点差を追いつき3ー3の同点タイブレークへ。そこで相手のミスもあって2点取れたのが大きく、その裏1点はやってもいいという守備陣形でしっかり5ー4で勝ちきった。ピッチャーの馬庭を中心に守りがしっかりし攻撃も長打はないがコツコツ当ててヒットを打ち、さらに勝負所ではスクイズもきちんと決めてなかなか土俵を簡単に割らない。
今日の3回戦も早実に2ー1とリードされても大量失点はしない。そして9回裏の攻撃、大社の応援の声がものすごい中、馬庭が打った打球はやや深いセカンドゴロだったが送球ワンバウンドとなりファーストが取れず、ランナーは2塁まで行った。ここでさらに応援団から大歓声。リードして有利なはずの早実選手がなんだか押されている雰囲気になった。そして次打者がバント、これをキャッチャーとピッチャーがお見合いしどこに投げられずノーアウト1塁3塁。そして次、これまで同様にスクイズが決まり、しかも1塁に投げたボールが逸れ、ノーアウトのままランナー1塁2塁となった。次は送りバントで1アウト2塁3塁と一打サヨナラ、いやスクイズでもサヨナラの場面になった。
ここからこの試合の最大の見せ場の一つが始まる。早実が選手交代を指示し背番号19の1年生選手が入って来た。と、同時にレフトの選手がいなくなった。レフトの交代、確かにそうなのだが19番の選手は本来は内野手、そしてなんとピッチャーよりも前の内野に陣取った。ごくたまに見る内野手5人の守備陣形を取ったのだ。驚いたねえ。場内は騒然、その後大社側からものすごい大音量の声援が。内野も前進守備をしていて早実は絶対にスクイズをさせないという陣形なんだろうが、外野に飛べばほぼサヨナラだ。
1ボール1ストライクの後3球目、バッターの打った球はなんとその19番の選手の前にボテボテの打球、捕った19番はサードランナーを牽制し1塁送球アウト、しかし当然サードランナーはホームめがけて突進!1塁からの送球はー?アウトッ!ギリギリだった。早実の奇策が見事に決まった。いやー、これで3アウトチェンジ。早実ナインが飛び上がって躍動する。そして10回からのタイブレークに移った。だが、定番の送りバントを大社も決めさせない。相当練習しているんだろうな。結局0点に抑えていよいよ大社のサヨナラかと思いきや、早実も送りバントを決めさせない。結局11回の攻防に。早実側の応援も大きかった。コンバットマーチが鳴り響く。早実は今度は強攻策。しかし運悪くサードゴロになりサードベース踏んで1塁へもアウトであっという間にツーアウト、その後四球、次打者がショートフライでチェンジ。いよいよ今度こそ大社のサヨナラかー。例によってノーアウト1塁2塁の場面、ここで大社は2年生の代打安松を出してきた。背番号は12で本大会はおろか地方大会でも一度も打席に立ったことはない選手だった。早実はいつものように1塁3塁手がバントに対して猛然とダッシュして送りバントをさせない構えだ。1球目を見送った後の2球目、安松は3塁側にきれいにバントを転がした。これが本当に絶妙でファールになりそうでならない。3塁手がほんの少し迷って取りファーストに送るもセーフ。ノーアウト満塁になった。後で分かったことが、送りバントがなかなか決めきれない大社は監督が「ここでバントを決める自信がある者、手を挙げろ」とみんなに問いかけ、それに安松のみが「サード側に決めてきます」と手を挙げたんだそうだ。これが公式戦初出場となった安松は見事にやりきった。
こうなればほぼ勝負の行方は大社のものだ。次の打者馬庭投手が打った打球は早実ピッチャーの股間を抜けセンターに転がった。その場でうずくまる早実ピッチャー。泣きながらファーストに向かう馬庭。いや〜素晴らしい試合だった。
次の準々決勝、大社の相手は鹿児島の神村学園か。普段は県勢を応援するがここは大社を応援しよう。そんなバカなと思われるかもしれないがそういう気持ちにさせるんだもん。つまりはそれくらい感動的な試合だったってことだ。
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