2022年5月8日日曜日

瀬越憲作の「中国定石」とは

1階の床の間には碁盤が置いてあってその側に以前オマルさんからもらった囲碁本が置いてあるはずだった。オマルさんは読み古した囲碁本をちょくちょく私に「払い下げ」ていたのだ。その中で以前面白いと思った古本がない。瀬越憲作という明治生まれの大棋士が残した「力の定石」という囲碁教本で、紙質、製本ともに相当古い本だったが、今の囲碁テキストには書かれていないような定石がいくつも紹介されていた。特に最近、オマルさんと互先で打つようになってその本に書かれてあったような打ち筋を打ってくるので再確認しようと思ったのだが・・。↓が瀬越憲作氏。弟子に呉清源、橋本宇太郎、韓国の曺薫鉉(チョ・フンヒョン)など囲碁史に残る超大棋士がいるのがすごい。

「ここにあったオマルさんの囲碁の本、無くなったのかなぁ」とカールに尋ねたら、「ああ、2階の押し入れに持っていったわよ」だと、さっそく何冊もある中から取り出したら、あった。なんと昭和32年(1957年)出版の本だった。オマルさんがこの本を読んで勉強したのは20代で私が生まれる前のことである。「力の定石」とのタイトルどおり、力戦になる定石をいくつくピックアップし解説した教本だ。

その中で「中国定石」と題する星の一間バサミの変化をオマルさんをよく打ってくる。中国定石とは聞き慣れないと思ったら、一般的ではなく瀬越憲作氏の造語のようだ。(なお、「中国流」のことではない。布石の一種「中国流」は今でも正式の囲碁用語として使われている)
↓が4月18日の碁で、オマルさん、黒丸のところに打ってきた。↑の⑥の手と同じである。
私はこの後どう打つのが正解かは知らず、ともかくも黒丸の右に抑えた。この後訳の分からない変化になったが、どうにか上手く打ててこの碁は勝った。しかし確かあの本にこの後の打ち方が書かれてあったはずと探すも見つからず、残念に思っていたのだった。

で、昼は「力の定石」の中の「中国定石」を碁盤に並べて勉強してみた。なかなか面白い。変化図の一例を示す。

実戦では私は上の①のどちらもそうは打たず、相手星の石にペタッと鼻付けする手を打った。これは「力の定石」には出ておらずオマルさん面食らったかも。
結局↓のような結果になった。どっちが得をしたのかはよく分からない。
結局、定石というものは長手数覚えても、相手がそのように打ってくるとは限らないず、返ってまずい結果になることも多く、「定石を覚えて二目弱くなり」とは昔からある囲碁川柳だ。定石の丸暗記だけではダメで、またその定石が石の配置に合っているかなど応用できる実力がないと結果は伴わないという格言でもある。

ただ、中国定石の変化図の中で↓の⑨の手には驚いたし、感激もした。こんな手は教えられないと全く浮かばないし、打った後の結果も素晴らしい。このような妙手が実際に打てたらどんなに満足か。定石は丸暗記するのではなく、素晴らしい手筋を学び、いつの日か実戦で打てるようになるのが理想だ。今日はこの手を知っただけでも良かったと思ったわー。

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