木曜を休んだので土曜午前は当然出勤だ。比較的落ち着いた外来でたまにはこれもありだな。その中で一番気になった患者は70才代の男性でHb(ヘモグロビン)が6.0と極めて低い貧血患者だった。貧血パターンは小球性低色素性貧血で鉄欠乏がある。男性でこれがあれば真っ先に消化管出血疾患を考える。年齢からして胃癌大腸癌を真っ先に調べねばならない。一昨日来院していて当然胃カメラも受けていた。胃炎を指摘されるが出血源はない。となれば・・。大腸内視鏡も受けなさいと言われたようだがとりもなおさず鉄補充の注射を受け帰宅していた。それで「注射受けたら気分がいい」とまた来院というわけだ。私はそれより大腸検査の必要性を説明する。しかしなんだか乗り気でない。それでも可能な限り早くと休み明けの火曜日に大腸内視鏡を組ませた。最近大腸内視鏡は多くて枠は一つ空いていただけだった。
「月末に旅行の予約を入れている」
どうもこれが念頭にあるようだ。く・・旅行はキャンセルをしたほうがいいと私は即言い放った。ヘモグロビンが6というのは本来入院レベルの状態なのだ。実際疲れがひどくて受診したはずでしょ。この先大腸癌が見つかるかもしれないし貧血だって月末に正常化するとは思えない。旅先で倒れないとも限らないんですよ。しっかしまあ、のんきなキャラクターなのよねえ。「そうですかあ」と深刻さを感じていない。Hb6になったのが非常にゆっくりであったために病状変化に気付きにくかったと推測する。胃潰瘍出血で短期間にHb6になれば意識を失うくらいだ。きっと大腸癌だろう。「絶対今度の火曜日に来て下さいね」私は念を押した。
(実は日記を書いているのは1週間後の1/16である。すでに結論は出た。上行結腸の進行大腸癌であった。本人に告知し家族にも来てもらい早めに外科での手術準備に入るよう説明するが「へーえ」てな感じでまだ外来に鉄剤注射に来ている。手術受けるなら市内の有名病院がいいとのことで紹介をする約束までは取り付けた。患者によっては翌日にも家族ともども来院して詳しい説明をと要求するケースもあるのに。元々のキャラクターなのか私の告知を信じられないのか・・ともかくものんきな患者である。)
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