2015年2月5日木曜日

問題な患者

昨日救急で入院した60才代男性患者は私が担当になった。自転車に乗っていて乗用車と衝突転倒し腰椎骨折がある人だった。非常勤Drが当初担当したので顔合わせの意味もあり事故のことや現状を聞こうと検査や外来の合間に病室を訪ねてみた。

ところがである。それから2、30分、この人と私は口論じみたことを演じてしまったのだ。私も努めて冷静に応じようとしたのだがいかんせん自分中心の論理を通そうとし建設的な方向へ行かない。私はこの患者の味方になり得るように治療していこうと言っているのに些細なことに怒り我を通そうとする。私より前に診たDrの非難をするのでそれが患者の言い分が正しければ黙って聴く気もするが特に非があるとも思えないのできちんと理を通して説明しようとする、しかし素直にそうですねと言うことがない。またかかりつけ医の先生に対し「(事故とは関係ない部位の腫瘍疑いを当院から指摘されたことに)あの先生は一度も検査をしてくれなかった、お礼に行かないとな。オレはやると言ったらやるよ」と言うのでこれはいわゆるお礼参り、仕返しをするとのことで、しまいには「油まいて火を付ける」と物騒なことを言うので人格的におかしいのではないかと思った。日常生活でもトラブルがきっとあるだろう。一旦引き上げいらつく気持ちを押さえながら透析室、外来と回った。言い争っている間、何度も診察依頼が来ていたのだった。(この患者については後日談あり)

私のこのケースとは違う変な人もいる。この間ラブカメ先生が対応した健康診断の20才代男性のケースだ。妙な自意識の高まりが患者側にあるせいか未熟な世間知らずの判断基準でクレームをつけてきた。以下その概要。

職場から健康診断を受ける必要があると言われ午後受診し一旦帰ったもののなぜか腹の虫が収まらなかったようで夕方電話をしてきた。内容は、まず受付から病院を出るまでに1時間もかかった、しかも簡単な検査と診察だけで1万円もかかった、それも簡単な説明だけだった、診察室では「働いているの?」「嫁さんはいるの?」と言われた。その質問は意味があるのか、セクハラではないか、失礼だ、馬鹿にしている、もっと詳しく何か説明されるかと思ったが何もなく「特に問題はない、いいですね、帰っていいですよ」と言われただけで、職場に何と言えばいいのか。コレステロールは233でやや高いと言われたが詳しい説明はなかったなどなどだ。

以上が午後4時ごろで、すぐにラブカメ先生が出られず、ならば「すぐに電話してくれ」とまあえらい態度なことよ。そこで午後6時ごろその人にラブカメ先生が電話対応した。
「1時間もかかった!」回答)採血、心電図、胸部レントゲン、身体計測などでこれくらいの時間は一般的で決して長くはない。
私の見解)回答の通りでそもそも急な健診依頼を即診てくれる施設というのは日本では当たり前だろうが世界的には珍しくそれを自分の勝手な見込みで時間が掛かりすぎるとよく文句を言えたもんだ。
「1万円近く払ったのに説明が簡単すぎた」回答)特に問題のある結果はなかったので「異常なし」、何もない良いですよと診断書を書いた。コレステロールの値は有意の差ではない。
これに対し「詳しい説明が無かった。ちゃんとした医師が私のところに来て説明して欲しい。職場に何と言えばいいのか」と食い下がり、ラブカメ先生もカチンと来たのだろうね、「私もちゃんとした医師だ。いつでも病院に来なさい。いつでも説明するから。会社には異常なかったと言えばよい。費用は規定通りだ」と言い返したところ、無言だったそうだ。ちなみにラブカメ医師は鹿児島大学医学部の前教授である。
さらに「仕事の内容と結婚の有無を聞かれた」回答)診断書を書くときには職場に出すのか、どこに提出するのか尋ねるのは一般的だ。結婚の有無は食生活が不順でないかを知るためである。これにも無言で、結局この人の感覚では1時間と1万円のわりには大した説明がなかったことに怒りを覚えたということで最後はしぶしぶ、しょうがないか分かったという感じで電話を切ったそうである。

いやはや。この人はコンビニなどで得られる便利さ安さが当たり前だと思い、病院も全く同じだと勘違いしている。しかも自分の乏しい価値判断が絶対だと思い上がっている。最近は個人意識が膨張してきていて、今回の場合、たかが地方の一病院がと思いそれと対等かそれ以上くらいの意識だ。ひょっとしてもうけ主義の病院野郎がといわゆる「上から目線」で思っていたのではないか。まあアメリカならこのケース、50万で済むかな?(アメリカでの盲腸一泊二日手術で約575万円、日本では全額負担ででも2、30万くらいでさらに保険が必ず利くのでその3割程度にしかならない)それが現実なのだ。アメリカがなかなか医療保険改革が進まず日本の保険診療が比較的うまくいっていることは彼は絶対に知らないはず。世間知らずのガキなんだが自意識増大のこの風潮には困ったものヨ。

0 件のコメント:

コメントを投稿