2023年9月29日金曜日

TV局にジャニーズ問題を解決する気があるのか

昨日、「その気になったら書くかも」記したが早くもその気になった。ジャニーズネタを書いた勢いで、30年以上ぶりに北公次の暴露本第1弾「光GENJIへ(1988年)」を手にしてみた。第2弾とは違い、ちゃんと帯も残っていてきれいな状態で保存されていた。↓4人のうち下段が北公次。右上のおりも政夫と比べると男臭さより可愛さがまさっていてジャニー喜多川の好みだったのだろう。

北公次は合宿所とかではなく同じアパートでジャニー喜多川と同棲していた点が後のジャニーズJr.らとは違う。しかし和歌山の田舎から出てきて貧しい家庭だった彼にとっては仕方ない状況で(江木俊夫やおりも政夫は自宅が東京だった)、毎晩のように行われる性行為がずっと嫌で嫌で仕方なかったという。本の中で触れられているが「ホモには2種類あり相手にホモ嗜好がある男性を好きなタイプとそうでないタイプでジャニー喜多川は後者だった」とのことだ。ジャニーズの来る男性はほとんどが普通の男の子でほぼ全員がジャニー喜多川の行為には嫌悪感を示していた。北公次はそうした生活が4年半にも及び徐々に精神的に参ってしまう。これは彼に限らずジャニー喜多川によって初めて性行為というものを経験させられた少年たちが大勢いて、中にはたった1回の行為で精神的におかしくなった子もいる。

後にジャニー喜多川はジュニアたちが13歳になるのを待ってから行為に及ぶようになる。というのもついこの間までのことだが(今年の7月12日まで)性交同意年齢が13歳未満禁止だったのを分かっていたのだ(現在は16歳未満に引き上げられた)。12歳以下にやってしまうと即アウトだが、13歳以上になるとお互いの意志確認など罪に値するかどうかは訴える側に面倒さがあるのだ。中には13歳の誕生日にヤラれたジュニアもいるらしい(まさに鬼畜)。

まあジャニー喜多川の鬼畜ぶりは今ではいくらでも知ることが出来る。問題はそれらを許した芸能界とメディア、主にTV局、出版社だ。今でこそTV局もフジTVが「ジャニーズ事務所に会社名変更を申し入れた」などと、かつてならあり得ない態度を示したりもしているが、NHKは番組内で「深く反省はしている」というものの、出演した弁護士の蔵元左近氏による「再発防止のため、NHK内の組織上の問題を調査することが必要で、第三者委員会の設置も必要に応じて行われるべきと思います」という意見に対し、稲葉NHK会長の答えは「調査は行わない」というにべもないものだった。はあ?だ。いや、「ジャニーズ事務所による被害者への補償と再発防止策の着実な実施が確認されるまで、新規に所属タレントの出演依頼を行わない方針」というのは分かるよ、でもここまでの被害を何十年も見過ごしてきたのはなぜか、自分らにも責任はないのかという検証は必要だろうよ。

主要TV6局のコメントを見ても、どこも判で押したように「重く受け止める」と言っているが、今まで報道してこなかったことについての謝罪はしていない。「長年ジャニーズ事務所に忖度してきた各局が急に態度を変えて「注視していく」「要望する」と言われても信用できない」との意見もネット上には多い。「テレビ局はジャニーズ事務所による性犯罪の共犯だ。タレント事務所の性犯罪を黙認し、テレビビジネスによる利益拡大を優先させた責任は重大」などと「注視」や「要望」する立場ではなく、共犯だろうとみなす声も多いのだ。

2019年7月に日本の公正取引委員会がジャニーズ事務所に「注意」をしたことがあった(処分や警告ではない)。「退所したSMAP元メンバー3人の番組起用を妨げるような働きかけがあった場合」は独占禁止法違反につながる恐れがありますよということだ。これに対するジャニーズ事務所は見解を出し今でもホームページで確認できる。その見解は「弊社がテレビ局に圧力などをかけた事実はなく、公正取引委員会からも独占禁止法違反行為があったとして行政処分や警告を受けたものでもありません。とはいえ、このような当局からの調査を受けたことは重く受け止め、今後は誤解を受けないように留意したいと思います」だ。これまた、はあ?だ。

今回の性加害問題に関して、「外部専門家による再発防止特別チーム」が調査報告書を公表しているが、「根本原因はジャニー氏の性嗜好異常。被害の拡大を招いたのは藤島メリー泰子氏の放置と隠蔽」と断じている。報告書の中には、事務所の副社長を務めてきたメリー喜多川氏(2021年死去)がメディアに圧力をかけてきた様子が綴られている。

・マスコミ対応を委ねられているメリー喜多川は、ドラマの共演者が気に入らないと、その放送局の社長に直接電話をかけ、外すよう要求することもあった。
・メリー喜多川は、元SMAPの森がオートレーサーの試験に合格した事実を前向きに報じようとした民放のプロデューサーに、「SMAPには森なんていなかったでしょ?」「最初からいないの。森はSMAPのメンバーじゃない」などと大声を出した。
・映画プロデューサーの奥山和由氏が映画『226』にジャニーズをやめたばかりの本木雅弘をキャスティングした際にも、「よく考えて」と連絡して来たので「ダメならハッキリそう言ってください」と返事すると「ダメとは言わない、もう一度よく考えて」と言ってきたので、熟考して魅力を感じての配役、本木で決行したが、それ以来ジャニーズ事務所、出禁的待遇になった。本木雅弘もそれ以降ジャニーズ事務所タレントとの共演はない。これが圧力でなくて何だというのか。

ある週刊誌記者は言う。「SMAPが国民的な人気グループになってから、メリー氏の振る舞いがさらに横暴になった。業界では周知の事実でした。だから、近年は圧力ではなく、忖度という言葉が使われてきた。何にもないのに忖度なんてしません。過去に圧力があったから、自然と忖度するようになった。メリー氏の思い通りの展開でしょうね。奥山氏のように圧力に屈しないプロデューサーがいれば、また状況は違ったと思いますが」

欧米諸国では昨日も書いたように独占禁止法の触れた場合の罰則がかなり厳しい。罰金なども半端ないのだ。日本では公正取引委員会の「注意喚起」という非常に軽い警告のようなものだけで実に芸能プロダクションにとっては甘くて過ごしやすい環境が与えられている。そこを上手く利用しのし上がったのがジャニーズ事務所だ。そこに甘んじ是正、自浄しきれなかったTV局などが反省や「重く受け止める」だけでは、また第二第三のジャニーズ事務所を生むだけではないか。TV局には期待出来ない(少なくとも現9月29日の時点では)。

独占禁止に関する法律の改正が必要だろう。それは性被害を二度と起こさせないということや公正な競争を邪魔しないということににとどまらない。日本の芸能全般の向上にもつながるはずなのだ。今日本発のカルチャーで言えばアニメが世界的に非常に有名だ。それは映画やドラマなど大手事務所の圧力やTV局、映画会社の忖度などほとんどなく才能あふれる若者を自由に使える環境が整っているからとも言える。私はドラマについては日本のものより韓国やアメリカなどをよく見ている。単純にそっちの方が面白いと思うからだ。日本のドラマなんてキャスティングが1年先2年先まで事務所の意向などで決まっているらしい。その点だけが日本発のドラマのレベル低下の原因とは思わないが、いくばくかの影響はあるはずだ。

今回の性加害報道がここまで問題化したのは、皆が知るとおりイギリス国営放送局BBCの「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」というドキュメンタリーが放送されてからだ。さすがBBCと言いたいところだが、実はBBC自身も同様の手痛い間違いを犯していたのだ。それはジミー・サヴィル(2011年84歳で死去)という「ナイト」の爵位も授けられ、イギリスの国宝とまで言われたBBCの子ども番組や音楽番組の人気司会者が、主に少年少女らに性的虐待を40年以上も繰り返していたという事件があった。このことが問題になったのは死後1年経った2012年で、被害者らが相次いで告発し他放送局が「性的虐待報道」を行い、BBC含めイギリス社会全体で検証し直した。その結果、ジミー・サヴィルは50年以上に渡って分かっているだけでも200件以上の性的虐待を行っていて、「常に性的暴力の犠牲者を獲物のように探していた常習者」だったと断定され、「機会があればいつでも」性的暴行に及び、その行為は「働いていたBBCのあらゆる施設」で行われたと指摘された。
さらに、「サヴィル氏による「おぞましい」虐待行為を止められなかったのは、BBCがそのための機会を何度も逃したからだ」と報告書で批判されたのだ。BBCの一部の幹部はその事実を知っていたにも関わらず、慈善活動家でイギリス王室とも友好関係にあり力を持っていたサヴィルを告発し解雇する勇気はなかったらしい。そして告発以後もBBCは当初隠蔽しようとする動きすらあった。しかし10億円以上の費用を掛け、700人以上の事情聴取、1000ページに及ぶ報告書を出した。どの国も似たような事件があるということで必ずしも日本特有の案件ではなかったわけだが、イギリスは今後こういったことがあってはならないと彼の死後でも警察まで動いていわゆるけじめをつけたということだ。BBCがジャニー喜多川の性加害に注目し独自取材をしたのはこの事件も背景にあったのは間違いない。ここまで来てもう一度言う。NHK稲葉会長の答えは「調査は行わない」である。

本木雅弘はジャニーズとは決別しても日本アカデミー主演賞を受賞するなど活躍出来ている。しかし彼の出る映画にジャニーズ事務所の有能なタレントを使うことが出来ないなどの弊害もあったわけで、最近の日本映画、ドラマが韓国に押されているのは自由にキャスティングするのを邪魔するジャニーズ事務所のせいなのかもしれないのだ。ま、これはたぶん言い過ぎだろうが、昨日も書いたように「エージェント、マネージメント、プロダクション」を一つの事務所が出来ないようにしないといけないのではないか。そしていろいろと調べて私でさせこんな意見を言えるのに、根本的に解決しようという態度のないTV局の態度には将来が暗いといわざるを得ない。敢えて厳しく言えば、各TV局は、ジャニーズ事務所にもの言える立場にはなく性加害の共犯者だったのにである。

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