2017年12月25日月曜日

「そうなる」前に

月曜の午前は本来内視鏡業務だが、思いの外胃カメラ予約が少なく外来患者診察も頼まれた。可愛いんだ理事長から依頼の患者さんは60才代男性で朝から胸背部痛があるということだった。心電図、採血、胸部CTを指示ししばし結果を待つ。心電図では心筋梗塞の所見が出やしないかと思ったが特に問題はなかった。採血でもそれらしきデータは出ない。しかし一時冷汗も出て血圧も高いとはこれはもしかして・・。

この人の背景を聞くとタバコ20本、焼酎2合が毎日で血圧が高いのは分かっていたが放置していたという。ふーん、やばいね。この時点であの疾患が頭に浮かぶ。それだったら青雲では治療出来ない、カイリョー病院に紹介転送かはたまた点妖怪病院か。胸部CTが出た。肺気腫が結構目立つ。タバコ20本というのは遠慮気味に書いた本数で実際はもっと多いのかも。でも気になるのは胸部大動脈だ。は、これはやはり・・。拡張し動脈内部のCT濃度が微妙に差がある。大動脈解離だろう。本来ならこの後造影CTをすれば確実に分かる。しかしそれって30分から1時間ほど時間が掛かる。鎮痛剤を使って痛みは軽減しているとはいえ解離なら早く治療が出来る病院に送った方がいい。手術の可能性も大だ。もっと詳しく大動脈の形状を見たくて冠状断の画像が画面に出るのをじりじりと待つ。その結果が出たと思ったら可愛いんだ理事長がやって来て「大動脈解離間違いないな」と。電カルでちゃっかり確認していたんだ。

となれば急いで受け入れてくれる病院に連絡そして救急車転送だ。幸いカイリョー病院が受け入れOKとのことでささっと紹介状を書き画像のCD-Rを作製し10数分で患者救急転送出来た。本人にはもちろん、妻と娘にも重症で専門の病院で治療、手術の可能性もあると説明した。娘は少しショックを受け涙目になったが「手術になっても助かるケースが多い」と安心させた。ここ数ヶ月で3人目の大動脈解離もしくは大動脈瘤解離で前の2人とも手術して無事帰ってきていたからだ。ただ今さらだが高血圧の放置やタバコなど発症前に対策しておけば防げたかもしれなかった。あまりにも「そうなってから」でないと分からない人が多い。何事も賢くありたいものだ。

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