2025年2月13日木曜日

鹿児島県で初めて大腸憩室出血にエンドライガーを使う

 昨日の108歳の患者さんの内視鏡検査直前のことだった。内視鏡室スタッフが「先生、こんな方が面会をしたいと来ています」と名刺を渡された。見ると、大学内視鏡室の同期の女医浅見Drだった。おう、珍しい。なんでここ(青雲会病院)まで来た?

実は、高齢の母親が青雲会病院隣のサービス付き高齢者向け住宅サザンブルーに越してきていて、当院にも現在通院中なのだという。それで「ここには最近ちょくちょく来ているの」だという。母親の面倒も診るために仕事は週2回だけ非常勤をしていると。一つは鹿児島市内の病院で女性外来や内視鏡検査などし、一つは父親がやっていたクリニックを他Drにゆずり、自分はそこに週1回の勤務なのだとか。私と同じ年だからたいてい父親は亡くなり母親は要介護ってことだ。いや、もう両親ともいない人が多いかも。久しぶりゆえに知り合いのDrの話題など話せば長くなりそうだったが、「先生、ERCPの準備が出来ています」と連絡きて、お開きとなった。でも、母親がらみでまた縁があるだろう。では、自身初の100歳代のERCP検査へ参ろう。

が、十二指腸乳頭にアプローチするまではよかったが、肝心のカニュレーションが難しかった。しばらくチャレンジしたが、私は早々に「エイエイコーDrを呼んでほしい」とスタッフに頼んだ。いつもなら多少上手く行かなくても粘って結局はカニュレーションは成功するパターンが多い。しかし、今回は最初からスムーズに行かなければ非常勤のエイエイコーDrに早めの交代をと目論んでいた。100歳超の患者さんにあまり無理を強いたくなかったのだ。で、手技を交代したエイエイコーDrだが、さすがの彼も難渋した。もしかしたら無理か・・と思いかけた時、「入ったかも」との感覚があったようでレントゲンでガイドワイヤーが総胆管に入って行くのが見えた時はホッとしたと同時に嬉しかった。首尾よく手技を終え、私は「エイエイコーDrを呼んだ私がえらかった」って変な自画自賛をしたよ〜。

ERCPを急いで昼休みにやったのは、午後は内視鏡室スタッフが不足していたのと、本日外来担当のタクミDrから「大腸憩室出血の患者さんを内視鏡検査して欲しい」と昼前に頼まれたからだ。憩室出血を止めるのならこてる先生ってみんなの暗黙の了解がある。で、夕方最後の検査はその患者さんだった。大腸を全部見て出血源はS状結腸にあると踏んだ私は丁寧に憩室腔を確認していった。ただそうしてもS状結腸だけで50個くらい全部で10個近くも憩室多発している人で、たいていのDrは出血源を突き止めるのをあきらめる場合がほとんどだ。しかしERCPと違って私は簡単にはあきらめない。出血の痕跡はあるが現在は止まっていてニフレック液で追加洗浄をしつつ粘り強く観察を続けていると・・「おやっ?」という所見があった。憩室内に小さな赤いものがくっついている。「たぶん出血源の露出血管だ。見つけたぞー、うひっひひ」と喜ぶその様子にスタッフみんなは吹き出した。いやいや発見出来さえすればこっちのものなんだ。

露出血管にクリップを掛け、これだけでも止血効果は得られるが、外れる場合もあり、私は結紮ゴムを追加で掛けるようにしている。これをEBL(ゴムバンド結紮法)というが、今回は昨年のDDWで紹介されていたEndoligar(エンドライガー:センチュリーメディカル社製)という新しいゴムバンド結紮法を試すことにした。おそらく鹿児島県ではこれが初めてのケースになる。旧来のEBL法でも今日のケースは十分に治療可能だが観察時に視野が狭いという欠点があり、しかも絞扼に失敗するとまたスコープを抜き出して入れ直す必要があった。このエンドライガーは視野がまったく普通観察と変わらない程度でしかも2回まで結紮が可能になる。↓憩室内の小さな赤い点が出血源だ。知らないと見過ごしそうなくらい。

エンドライガー装着した状態の大腸内視鏡↓。2ヶ所に結紮ゴムが入っている。
クリップ掛けた後、エンドライガーを憩室に近づける↓。視野の狭窄はほとんどない。
エンドライガーで吸引結紮する様子↓。
結紮後の憩室↓。クリップごと結紮するのが青雲会病院式だ。今回はゴム1個で十分。

結紮された大腸憩室は数日で壊死しゴムは脱落し使命を終える。出血血管ごと壊死処理され、その後は潰瘍化し、瘢痕治癒していく。ふふふ、上手くいった。若干終業時間を過ぎてしまったが、こんな時は気分よく家路につくことが出来るというもの。いぇい!

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