2022年12月22日木曜日

姿無き指導医

今日の午後は年休を取って帰宅しようと考えていた。というのも、年賀状作成が切羽詰まっていて、裏のデザインに使う家族写真を日中の屋外で撮る必要があったからだ。だが昼前に外科の貴文Drに「総胆管結石の患者が来ていまして」と頼まれたのと、心不全の高齢患者の入院も受け入れたため、早々に断念した。

ERCP検査もある時は毎週のように続くが12月はなかった。今月は初めてじゃないかな。カルテ記録を見ると、その患者さんは6年前にERCPの専門医とも言えるブックリバーDrが処置を実施し、入院は私が受け持った初老の女性だった。「あの時は検査後の翌朝お腹が痛くて・・先生にさすってもらってから痛くなくなりました」と感謝されたが、カルテで確認すると、当直明けで私が診察したのは間違いない。しかし鎮痛剤の注射をしっかり使った後だった。患者さんにとっては医者の触った手が痛みを和らげてくれたんだと思ったし、またそう思いたいのだろう。

前回のブックリバーDrの記録には十二指腸乳頭への挿入口が「芋虫状で分かりにくく・・」との記載もあった。やってみて確かにそう。しばらく差し口が私も分からず時間を使ってしまった。その時レントゲン操作台から非常勤のエイエイコーDrが「わずかに隆起している部位の左側にたぶんあります。前回はそこから差し込んでいます」とアドバイスしてくれた。そこを見るが乳頭口はよく分からない。いったんスコープを離し、電カルの6年前の内視鏡画像を見直してみた。ブックリバーDrが苦労して見つけた乳頭口の位置を見て「はあ、ここなのか」と合点してからはスムーズに行き、1cmほどのビリルビン結石の排石を一気に済ませた。いやー、ブックリバーDrが以前やってくれていなければ相当難渋したに違いない。姿無き指導医だったね。

終わって汗びっしょりで検査着を新調した。まだ1件大腸内視鏡も残っていたのだ。ひどい便秘でしかも以前他医で受けた内視鏡は途中までしか入らなかったという高齢女性患者さんだ。こういう患者さんはまず私に回ってくる。やってみて確かに弛緩性のゆるい大腸の人だったがそこまで難しいかな。5分もかからず盲腸まで到達したよ。あーそうか。大腸内視鏡の経験が少なかったブックリバーDrは内視鏡挿入に困るとよく私にヘルプを頼んでいたなー。あの時はお互い様だった。

青雲会病院のERCP関連検査のマニュアルは彼の方針を踏襲し今に至っている。青雲は2013年から常勤3年、非常勤1年でに辞めてすでに6年近くなる。ブックリバーDrは今では自分の名前を冠した病院の院長先生だ。今日は彼がいなくても病院にとっていまだに役立っていることを痛感した日だった。

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